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論文作成のための準備作業として,収集した情報,調査したこと,現時点における自分の考えを整理してみたことなどを断片的に記したものである。
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場面緘黙症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 
場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)とは、家庭などでは何の問題もなく話すことができるのに、社会不安(社会的状況における不安)のために、学校や幼稚園といったある特定の場面、状況では全く話すことができなくなる現象を言う。幼児期に発症するケースが多い。 別名、選択性緘黙症。英語名、Selective Mutism


症状 [編集]

概要 [編集]

場面緘黙は、ある特定の場面でだけ全く話せなくなってしまう現象である。子供が自宅では家族らと問題なく会話をしていても、学校や幼稚園など家の外では全く、あるいはそれほど話さず、誰とも話さないという例は多い。そして、その子供は非常に内気な様子に見え、グループでの活動に入りたがらなかったりする。 たいていの場合、発話以外の、表情や動作やその他のやり方であれば、人とコミュニケーションを取ることができる。また、行動面や学習面などでも問題を持たない。

単なる人見知り恥ずかしがり屋との大きな違いは、症状が大変強く、何年たっても自然には症状が改善せずに長く続く場合があるという点である。

経過 [編集]

場面緘黙の経過は子供によって異なるが、効果的な教育的介入によって1、2年で克服することもある。また、長い間治らない例はあまりないが、効果的な教育的介入を行わないと、小学校、中学校、高校、成人まで継続することもある。早期に適切な教育的介入を行うことが大切である。

また、場面緘黙児を青年期や大人になるまで追跡した調査は少ないが、その調査によると、子供の頃に場面緘黙の治療を受けたことがある成年や大人のうち、約半数が「現在は何の問題もない」と報告している。しかし、残りの半数は、同年齢の一般の人たちに比べて「自信が無く、自立心に欠け、大人になりきれていない」と表現している。

発症年齢 [編集]

一般的に、2~5歳の間に発症する。しかし多くの場合、6~8歳になるまで診断や治療はほとんど行われていない。これは、疾患に対する理解度の不足などにより、単なる引っ込み思案といった性格的原因との区別がつけにくいためである。

発症率 [編集]

現状ではあまり明確になっていない。

1998年の調査では小学校低学年では全体の2%がこの症状を持っているという報告がされた(Kumpulainen et al., 1998)。また、性別では女の子の方が男の子より1.5~2倍の割合となっている(Steinhausen and Juzi, 1996)。

アメリカの精神医学誌The Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatryの2002年の調査では、その発生率は1000人中7人の割合とされた。

診断 [編集]

場面緘黙症の判断基準について、2つの主流の分類を以下に示す。

ICD-10 [編集]

選択性緘黙症とは、話す際に著しい、感情的に断固とした選択性があるのが特徴であり、子供がある若干の状況で言語能力を示すが、別の(定義可能な)状況では話すことができないものである。この障害は、通常、社会不安障害引きこもり過敏症または治療に対する抵抗などを含む、際立った個性機能と関係している。

ただし以下は除外する:

DSM-IV [編集]

場面緘黙症(選択性緘黙症)

  • 他の状況では話すことができるにもかかわらず、ある特定の状況(例えば学校のように、話すことが求められる状況)では、一貫して話すことができない。
  • この疾患によって、学業上、職業上の成績、または社会的な交流の機会を持つことを、著しく阻害されている 。
  • このような状態が、少なくとも一ヶ月以上続いている。(これは、学校での最初の一ヶ月間に限定されない)
  • 話すことができないのは、その社会的状況において必要とされている話し言葉を知らなかったり、また、うまく話せない、という理由からではない。
  • コミュニケーション障害(例えば、吃音症)では説明がつかず、また、広汎性発達障害統合失調症またはその他の精神病性障害の経過中以外にも起こるものである。

付随する問題 [編集]

場面緘黙児のほとんどは、それ以外になんらかの不安に関連した病名を診断されている。多く見られるのが、社会恐怖症、分離不安、完全主義的傾向、強迫的傾向などである。また、病名はないが、特徴的な問題も含めて以下に挙げる。

社会恐怖症 [編集]

社会恐怖症の子供は、他人からの否定的な評価を恐れ、自分が何かみっともないことを言ったり、したりするのではないかと過度に気を遣う。具体的には、友達と遊ぶのを避けたり、人前で食べられなかったり、公衆トイレが使えなかったりする。 しかし、場面緘黙症と社会恐怖症の関連はまだきちんと解明されているわけではない。大きな違いは、場面緘黙の発症の多くが2~4歳であるのに対し、社会恐怖症では10~11歳にならないと現れない点、また、場面緘黙児が、非言語的な手段ではコミュニケーションを問題なくとれるのに、社会恐怖症の場合はあらゆる面での社会的交流に不安を感じている点がある。

分離不安 [編集]

学校へ行くとき親と離れるのを嫌がる、親と別室で寝るのを嫌がる、自分自身や大好きな親に何か悪いことが起きるのではないかと心配する、などの問題を抱えていることもある。これは場面緘黙児の約20~30%にのぼると言われている。

完全主義、強迫的傾向 [編集]

不安や苦痛を伴う固定観念や思考をし、自分の周囲をいつも決まった状態に保つことにこだわったり、失敗に対して過度に神経質になったりする。

学校のトイレを使うのが怖い [編集]

これは、先生に許可をもらうこと、皆の注目を集めることなどが場面緘黙児にとって不安を感じるためである。

反抗行動のようにみえる回避行動 [編集]

場面緘黙児は、一見すると反抗的で支配的で人を操っているかのように見えることがある。 しかし、このような行動を起こすとされる場面緘黙児も、不安のない状態においてはそのような行動をみせない。 このことから、これらの行動は不安による行動であることがわかる。つまり、わざと規律に逆らっているのではなく、恐怖を感じる場面を回避するために、指示に従わなかったり、規律を守らなかったりしているにすぎない。

原因 [編集]

場面緘黙症の子供の多くは、先天的に不安になりがちな傾向がある。また、内向的な性格であることが多く、これは偏桃体と呼ばれる領域が過剰に刺激されることによると考えられている。この領域は、脅威の兆候を感知すると「闘争・逃避反応 (fight-or-flight response)」を引き起こす。

場面緘黙症の子供には、感覚情報の処理に問題のある、感覚統合障害(SID)と呼ばれる障害を持つ者もいる。これは不安を引き起こし、子供は「閉鎖」させられて話すことができなくなる。

場面緘黙症の子供のうちおよそ20~30パーセントは、会話障害あるいは言語障害をも併せ持っている。このことによって、子供は話すことが要求される場面でストレスを感じる。また、両親の母語が異なる子供や、言語の異なる外国に暮らす子供、幼少期に外国語にさらされた子供は、話すことが要求された言語について自信を失ってしまうことがある。いずれの場合も子供は内向的な性格を示すが、このような言葉の問題によるストレスは、子供を緘黙にしてしまうのに十分な不安の原因となる。

場面緘黙症の原因が虐待ネグレクト心的外傷によるものであるとは限らない。場面緘黙症の子供は、全く話すことができない状態に症状が進行するケースもあり得るが、ほとんどの場合、場面によっては話すことができる。一方、心的外傷による緘黙は、通常、突然あらゆる場面で話すことができなくなる。

治療 [編集]

場面緘黙症は、必ずしも年齢とともに自然に改善されていくわけではない。そのため、低年齢のうちに治療を受けることがとても重要である。そのままにしておくと、周りの人はその子は話さない子と考えるため、緘黙症状そのものが強化されてしまい、話すことがますます難しくなってしまう。このような場合は、誰もその子のことを知らない場所に環境を移すこと(転校等)で状況が好転することも時にはありうる。

10代での治療は、必ずそうだというわけではないが、より難しくなる。

子供に無理に話させようとしてもうまくいかない。そんなことをすれば、不安の程度をよけいに強めてしまい、緘黙症状が強化されるだけである。緘黙の子供は、外からは、片意地を張っていてわざと話さないように見えることがよくある。というのも、子供はそういう状況で、コミュニケーションやボディランゲージを全くしなくなってしまうため、見る人には失礼な行為と受けとられてしまうのである。

適切な治療は、子供によって、年齢やその他の要因によって非常に異なる。 年齢の低い子供に対しては、刺激フェイディング法が行われるのがアメリカやイギリスなど欧米では一般的である。

薬物治療については、精神医学界でも意見が分かれている。不安を取り除く薬はきわめて少量で効果があり、服用量が多すぎる場合だけが問題なのだと考える人たちがいる一方で、 子供に対して、精神薬の副作用はたいへん危険であるため、少量であっても、たとえ一時的効果があったとしても使用すべきではなく、行動療法的なまた心理療法的な取り組みのほうが好ましいと考える人たちもいる。

刺激フェイディング法 [編集]

この方法では、患者はまず、コミュニケーションがとれる安心できる人といっしょに、条件が整えられたある状況設定の中におかれる。 治療上のたくさんの小さなステップを用意しながら、その状況設定の中に徐々に他の人を招き入れる。

これらのステップは、それぞれ段階別によく用いられる。「すべり込み手法(スライディングイン・テクニック」と呼ばれるもので、新しい人をすでに話している人のグループにすべり込ませていく方法である。この方法で、初めの1人や2人から、しだいに多くの人たちへと移って行くには、比較的長い時間がかかる。

脱感作療法 [編集]

次のステップへの心の準備を整えるために、最初は間接的なコミュニケーションでも良いとする。たとえば、より直接的なコミュニケーションに挑戦する前に、Eメールや電話、テープへの録音などの方法がある。

薬物治療 [編集]

フルオキセチン(fluoxetine)のような抗鬱剤が、場面緘黙症の子供の治療に効果的であることを示すいくつかの学術的証拠があると考えている開業医もいる。 フルオキセチン以外の精神薬についても、不安を軽減しコミュニケーションを促す精神薬は場面緘黙症に効果があると、多くの医学界の人たちが考えている。しかし、子供に対する精神薬の使用に対して厳しく反対し、精神薬が様々な行動障害の発生に関与するという医学的証拠はまだ得られていないと指摘する開業医や活動家《Peter Breggin・David Healy を参照》もいる。行動不安障害の子供に対する向精神薬の投与に関する告発は、複数の製薬会社への民事訴訟(2005年継続中)以来、特に強まってきた。製薬会社は、非公開内部調査文書を事前に提示したが、その内容はフルオキセチン(fluoxetine)や他の抗うつ剤であるSSRIと、自殺や精神病、言語の発音や正常な社会性発達のための脳の部位へのダメージ等の危険性を増加させるというものだった。

from en:selective mutism(19:40, 5 January 2007)より部分的に翻訳。

治療の実施に関する問題 [編集]

現実性 [編集]

治療には教育的介入が必要となる。しかし、その手法がほとんど広がっておらず、治療経験のある専門家も少ない。また、手法があっても、日本の場合は学校組織が強固で、柔軟な対応がとりにくいことが予想される。

限定された有効性 [編集]

場面緘黙の治療実績が多くあり、かつ効果の高い治療法が行動療法である。しかし、場面緘黙の形成機序から考えると、その有効性は限定される。つまり、治療のタイミングとしては、症状が重篤化する前の初期段階でなければならず、必然的に低年齢であることが必要となる。

診断の難しさ [編集]

診断時に別の疾患と混同されることがある。たとえば、自閉症スペクトラム障害やアスペルガー症候群との鑑別診断は難しい。特に心理士の前で子供が人に対して関心を示さない様子である場合に誤診されることがある。

誤解と名称変更の経緯 [編集]

場面緘黙症の英語名“selective mutism”は、以前に“elective mutism”という名称だった。この名称のために「ある特定の状況で話さないことを自分の意志で選んでいる」と、心理学者でさえ誤解するような状況が広まってしまった。 しかし、場面緘黙症の人たちは、話そうとしても、極度の不安のためにどうしても声が出ないのであり、故意に話さないわけではない。DSMでは1994年、故意に話さないのではなく、話すことができないのだと言うことを示すために、“selective mutism” と改称された。 しかしながら、これに類する誤解が、今なお多く流布している。例えば、2005年5月26日のABCニュースでは、ニュースリポートの中で、この疾患の原因はトラウマであるとか、わがままで故意に話さないためなどと、誤った報道があった。

参考文献 [編集]

  • アンジェラ E.マクホルム, チャールス E.カニンガム, メラニー K.バニエー『場面緘黙児への支援―学校で話せない子を助けるために 』 河井 英子, 吉原 桂子/共訳、田研出版株式会社、2007年、191頁。

外部リンク [編集]

関連項目 [編集]

 
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