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論文作成のための準備作業として,収集した情報,調査したこと,現時点における自分の考えを整理してみたことなどを断片的に記したものである。
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記憶

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

感覚記憶 [編集]

映像や音などを最大1~2秒ほど、記憶する記憶。

短期記憶(STM) [編集]

短期記憶(STM)とは、短期間保持される記憶である。 約20秒間保持される。7±2まで(5から9)の情報しか保持できない。この事実は心理学者のジョージ・ミラーによって発見された。7±2という数はマジカルナンバーと呼ばれる。 短期記憶を蓄える貯蔵庫を短期記憶貯蔵(STS)と呼ぶ。

短期記憶の情報は時間の経過とともに忘却される。これを防ぐためには維持リハーサルを行う必要がある。

短期記憶から長期記憶に記憶を転送するためには、精緻化リハーサルを行う必要がある。

意識に昇る以前の感覚器官に保持される。

作動記憶 [編集]

短期記憶を発展させた作動記憶という概念が提唱されている。 作動記憶は短期的な情報の保存だけでなく、認知的な情報処理も含めた概念である。 容量には個人差があり、その容量の差がある課題での個人の パフォーマンスに影響を与えていると言われている。 作動記憶は中央制御系、音韻ループ、視空間スケッチパッドからなる。

中央制御系 [編集]

音韻ループと視空間スケッチパッドを制御し、長期記憶と情報をやりとりするシステムである。

音韻ループ [編集]

言語を理解したり、推論を行うための音韻情報を保存するシステムである。

視空間スケッチパッド [編集]

視覚的・空間的なイメージを操作したり、保存したりするシステムである。

中期記憶 [編集]

主に海馬に記憶される、1時間~1ヶ月程度保持される記憶。 中期記憶の忘却は、エビングハウス忘却曲線によって表される。

長期記憶(LTM) [編集]

長期記憶(LTM)とは、長期間保持される記憶である。 忘却しない限り、死ぬまで保持される。 長期記憶を蓄える貯蔵庫を長期記憶貯蔵(LTS)と呼ぶ。

長期記憶の忘却の原因については、減衰説と干渉説、さらに検索失敗説が存在する。 減衰説とは、時間の経過とともに記憶が失われていくという説である。 干渉説とは、ある記憶が他の記憶と干渉を起こすことによって記憶が失われていくという説である。 検索失敗説とは、想起の失敗は記憶された情報自体が消失しているのではなく、適切な検索手がかりが見つからないため、記憶内の情報にアクセスできないことによるという説である。

長期記憶は陳述記憶・非陳述記憶の2つに分類される。 長期記憶を近時記憶と遠隔記憶の2つに分類する説も存在する。

陳述記憶 [編集]

詳細は宣言的記憶を参照

言葉で表現できる記憶である。宣言的記憶とも呼ばれる。 陳述記憶はエピソード記憶・意味記憶の2つに分類される。

エピソード記憶 [編集]

詳細はエピソード記憶を参照

個人的体験や出来事についての記憶である。 1972年に心理学者のタルヴィングによって、意味記憶と対になる形でその区分が提唱された。

意味記憶 [編集]

意味記憶とは言葉の意味や世界のあり方についての記憶である。 1966年に心理学者のマックス・キリアンによって提唱された。 意味記憶の構造は、(コリンズキリアンによって)意味ネットワークという形でモデル化されている。他にも、意味記憶を表す多くのモデルがある。

非陳述記憶 [編集]

非陳述記憶とは、言葉で表現できない記憶である。 非宣言的記憶とも呼ばれる。 非陳述記憶は手続き記憶・プライミング記憶の2つに分類される。

手続き記憶 [編集]

詳細は手続き記憶を参照

物事を行うときの手続きについての記憶である。 いわゆる「体で覚える」記憶がこれにあたる。

プライミング [編集]

先行する事柄が後続する事柄に、影響を与える状況を指して「プライミングの効果(または”プライミング効果”)があった」と称される。そのような状況における「先行する事柄」をプライムと称す。先行する事柄には、単語、絵、音などがありうる。例えば、「医者」という言葉を聞くと、その後「看護師」、「あかひげ」などという言葉の読みが、「富士山」や「帰郷」という言葉の読みよりも早くなるのはプライミング効果があったこととなる。

多くの場合、その効果が無意識的である点、およびかなりの長期間(例えば1年間)にわたり効果が持続する点、記憶に障害を受けた者にも無意識的なプライミング効果は損なわれずにある(機能し続けている)点に、この現象の面白さがある。

自伝的記憶 [編集]

自分自身に関する事柄についての記憶である。自分が幼いころのことを覚えているのは、自伝的記憶が働いているためである。 エピソード記憶の一部。

[1]自伝的記憶テスト

展望的記憶 [編集]

将来行う行動についての記憶である。 これに対して、過去の出来事についての記憶は回想的記憶と呼ばれる。 この記憶が面白いのは、一般に記憶とは「過去」の事柄を指すと受けとられているのに対して、この展望的記憶が未来(将来)の記憶である点である。スケジュール帳、PDAなどの予定を管理する機器類の使用方法、使用行動と絡めて研究されることも多い。

記憶の階層 [編集]

記憶の階層については、心理学者のタルヴィングによって考えられた記憶システム論というモデルがある。左の記憶ほど原始的で、生命の維持に直接関わり、右の記憶ほど高度な記憶になる。

手続き記憶、プライミング記憶、意味記憶、短期記憶、エピソード記憶

記憶の過程 [編集]

記憶の過程は記銘保持想起、(再生、再認、再構成)、忘却という流れになっている。

記銘(符号化) [編集]

情報を憶えこむことを記銘という。 情報を人間の記憶に取りこめる形式に変えるという情報科学的な視点から符号化と呼ばれることが多い。

保持(貯蔵) [編集]

情報を保存しておくことを保持という。 情報科学的な視点から貯蔵と呼ばれることが多い。

想起(検索) [編集]

情報を思い出すことを想起という。情報科学的な視点から検索と呼ばれることが多い。想起のしかたには以前の経験を再現する再生、以前に経験したことと同じ経験をそれと確認できる再認、以前の経験をその要素を組み合わせて再現する再構成などがある。

忘却 [編集]

記憶されていたことを想起できなくなることを忘却という。

記憶がテーマとなっている作品 [編集]

関連項目 [編集]

外部リンク [編集]

ウィクショナリー記憶の項目があります。

以下、スカラペディアより。科学的な立場からの解説。

以下、スタンフォード哲学百科事典より。哲学的な解説。

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ACの役割 [編集]

ACは家で生き延びるための役割を背負ってしまっている。役割を背負った子供は、子供として楽しい子供時代を過ごすことは出来ず、自分の感情を押し殺し、傷ついていく。

ヒーロー(Hero)
家の問題を隠蔽するために、家の外でがむしゃらに活躍する。あるいは世間に注目されることで、両親の関係を取り持ち、家の問題を表沙汰に出来なくさせる。しかし反面、全てを犠牲にして実績を上げるために、心の温かさを育むことが出来ない。
スケープ・ゴートScapegoat
自らの生贄。家族内の感情のゴミ箱のような存在。家の問題を「全てはこの子のせい」という幻想を抱かせ、家族の真の崩壊を防いでいる。暴れたり問題を起こす役割であると同時に、ケガや病気精神病人格障害を背負うことさえも役割の一環。家庭の内外で虐待いじめのターゲットになりやすい子でもある。体を張って家庭の問題を外に出すことが最終的な役割。長男に多い。
ピエロ(Clown)
一人でふざけておどけたり、バカなことをしでかしては、関心を自分に引き寄せ、兄弟姉妹が犠牲者になるのを阻止する。
リトル・ナース(Little Nurse)
長女に多く、犠牲になった家族を守り、世話する。
イネイブラー(Enabler)
偽せ親。親の配偶者役、未熟な親に代わって兄弟の親をやってしまう子。
プラケーター(Placater)
なだめ役。小さいカウンセラー。暗い顔をして溜息をついている親(多くは母親)を慰める。末っ子に多い。
ロスト・ワン(Lost One)
いない子。家族内の人間関係を離れ、身の安全を守るため、見ざる聞かざる言わざる役に徹してしまう。
ロンリー(Lonely)
家族に理解されない悲しみを背負い、ひきこもる。
プリンス / プリンセス(Prince / -cess)
意思を無視して過剰に溺愛され、人形のように可愛がられ、甘やかされて育つ子。

ACの主なタイプの特徴 [編集]

ヒーロー
外面 - 小さな親、小さな大人、生真面目、努力家
内面 - 心の傷、不適応感、罪悪感、過剰な自尊心
言動 - 他者に自分の評価を押し付け尊敬を得ようとする
弱点 - 仕事依存、依存的な人と結婚、人を支配し操作、完全主義
長所 - 自身の失敗を許容、自己に厳しく他者に寛大、管理職の適性
スケープ・ゴート
外面 - 反抗的、陰気、反感を買う行動、張り合わない
内面 - 心の傷、見捨てられ感、怒り、拒絶、不適応感、低い自己評価
言動 - 問題を起こし注目を集める、自虐自罰行為、自暴自棄
弱点 - アルコール等依存傾向、問題児、年少妊娠や犯罪の傾向
長所 - 現実の直視、立ち直る勇気、人を助ける力
ピエロ
外面 - 過度にかわいく子供っぽい、家族の笑いと関心の対象、か弱くて保護を必要とする
内面 - 自己評価が低い、恐れ、孤独、無力感
言動 - ふざけ、ユーモア
弱点 - ひょうきん、ストレス処理が下手、いつもヒステリー寸前
長所 - 人あたりがいい、良き友人となる、頭の回転が速い、ユーモアのセンスがある、有能
ロスト・ワン
外面 - 顔を見なくても誰も気にしない、無口で陰気
内面 - 孤独、傷つき、見捨てられ、恐れ、あきらめ、挫折感
言動 - 少なくとも手がかからない、心配させないという意味では良い子
弱点 - 優柔不断、孤独、「NO」と言えない、行き当たりばったり
長所 - 自立している、才能豊かで創造的、はっきりしていて決断力に富む

学術的立場 [編集]

AC理論と精神医学界 [編集]

2009現在、全般的に日本の精神医学界ではAC理論とは距離を取っている。それは前述のACの定義から、社会でACは多数派であり、ACであっても社会生活に当面支障のない人が大半であることが理由とされている。心的苦しみが極度に進行し精神科治療が必要となった、虐待や喪失体験による心的障害だけが治療対象とされる場合が多い。したがって精神科の中にさえ「ACとは病気ではない」という見方をする医師もいる。

しかし一方では、一部にAC理論を正面から受け入れ、カウンセラーも兼任して患者と向きあい治療を行っている医師もいる。

アメリカ・イギリス・フランスなどでは、日本よりはるかに進んだ治療的取組みがなされており、またその方法論も洗練されている。

ACと精神疾患 [編集]

ACは精神疾患名ではないが、ACと称し称される人々の中には精神疾患を有している人たちがいる。

うつ病パニック障害社会不安障害全般性不安障害解離性障害などの一軸上の問題、境界性人格障害回避性人格障害反社会性人格障害演技性人格障害など二軸上の問題がそれらに当たる。

精神科治療では本来の病名と異なる「ぼんやりした病名」を患者に告げる悪しき習慣があり、自律神経失調症周期性嘔吐症慢性疲労症候群起立性低血圧などがそれにあたる。

とくに二軸上の人格障害圏の問題を抱えた人たちは「人格障害圏」であるとの告知に激しい否認・拒否を示すことがあるため、同様にぼやかした言い方として「アダルトチルドレン」や「機能不全家族」といった呼称が治療者と患者のあいだの摩擦軽減のため便宜上用いられることがある。

ACと社会問題について [編集]

現在の社会問題である、子供の不登校引きこもり家庭内暴力・若者がキレる・凶悪犯罪、などの現象はAC理論と密接に結びついているという見方が固まりつつある。これまでは、それぞれの現象は個別に研究されている傾向があったが、主としてメンタルケアを直接行っているカウンセラーなどのあいだで、児童期の養育環境・親子関係の問題として統合される過程にある。

著作活動による社会への理解 [編集]

ACに関する文献は米英国を中心にいくつか出版され、国内ではそうした文献を翻訳していく中で、アルコール依存症の患者の治療で定評のある斎藤学の著作から広まっていったが、その本来的な意味である「アルコール依存症の人を主にする、機能不全家族の中での、幼少期のストレス体験を受けて育った者」という定義から離れて、マスコミなどで恣意的な逸脱した意味で流布されるようになった。

そのため、斎藤学は自らこの語を使うことを一切やめ、彼の設立した家族機能研究所も、この言葉との関係を現在では絶っている。そのかわり専門家のあいだでは、アメリカで自然発生的に人々のあいだに広まっていった「アダルトチルドレン」の原義を引き継ぐ言葉としてアダルトサヴァイヴァー(Adult Survivor)を用いられるようになってきている。

1990年代後半に入り、不景気と就職難を背景に社会的にメンタルな病気の増大とともに、ACも再度注目をうけるようになり、斎藤学、西尾和美信田さよこ長谷川博一などの著作や、いくつかの米英国人の著作を通してアダルトチルドレンの認識が広がりつつある。

しかし、マスコミによる誤情報の流布の影響もあり、AC問題は日本の社会においては正しい認知をされているとは言いがたい。

いっぽう、医療機関に属する心理カウンセラーなどのあいだでは、すでにAC概念は常識となっており、主な受け皿となっている。またACODAなどの全国自助グループもあり全都道府県で自助活動が行われ、まだまだ表舞台にいるとは云えないが、全国のAC問題を抱える人にとって一助となっている。

ACへの批判 [編集]

AC問題は世間一般ではかなり誤解を受けており、批判も受けている。簡単な誤解としては「子どものような大人」、「大人になりきれていない未熟な人」などである。批判としては「いい年をして自分の未熟な部分を親のせいにするな」が代表的な例である(ただしこうした批判も、小此木啓吾高橋龍太郎の著作によれば、一部のAC自称者に関しては的外れではない)。

こうした誤解・批判がAC問題に悩む人にとって解決への大きな足かせとなっている。専門家側からは概念の曖昧さが指摘されたり、ACOAと非ACOAの差が見られないとする報告もなされており、日本では主に精神分析に批判的な精神科医や臨床心理士がAC概念の有用性を疑問視している。

関連項目 [編集]

外部リンク [編集]

脚注 [編集]

  1. ^Game Watch ニュース 2001年5月1日

参考文献 [編集]

  • Harman, J.L.:"Trauma and Recovery", Basic Books, New York, 1992
  • Harvey, M.R.:"Memory Research and Clinical Practice - A Critique of three Paradigms and a Framework for Psychotherapy with Trauma Survivors", in 'Trauma and Memory', Thausand Oals;CL, Sage Publications, 1996
  • Trikett, P.K. & Putnam, F.W. "Developmental Consequences of Child Sexual Abuse", in 'Violence Against Children in the Family and Community', American Psychological Association, Washington D.C., 1998
  • 斎藤学『アダルトチルドレンと家族』学陽書房
  • 斎藤学『家族依存症』新潮文庫
  • 斎藤学『「家族」はこわい』新潮文庫
  • 西尾和美『アダルトチルドレンと癒し』学陽書房
  • 西尾和美『心の傷を癒すカウンセリング366日』講談社+α文庫
  • 西尾和美『機能不全家族』講談社
  • 信田さよ子『アダルトチルドレンという物語』文春文庫
  • 信田さよ子『愛情という名の支配』海竜社
  • 長谷川博一『たましいの誕生日-迷えるインナーチャイルドの生きなおしに寄り添う』日本評論社 1999年
  • 長谷川博一『あのとき、本当は……-封印された子どもたちの叫び』樹花舎 2004年
  • 東ちづる・長谷川博一『<私>はなぜカウンセリングを受けたのか―「いい人、やめた!」母と娘の挑戦』マガジンハウス 2002年
  • 赤木かん子『こころの傷を読み解くための800冊の本』自由国民社
  • 西山明『アダルト・チルドレン 自信はないけど、生きていく』三五館 1995年 ISBN 4883200663
  • 熊田一雄『“男らしさ”という病?ーポップ・カルチャーの新・男性学』風媒社
  • ハーバート・L.グラヴィッツ、ジュリー・D.ボーデン『リカバリー アルコール依存症の親を持つ成人した子供たちへの手引』星和書店 1994年 ISBN 4791102673
  • クラウディア・ブラック『子どもを生きればおとなになれる』アスク・ヒューマン・ケア
  • クラウディア・ブラック『もちきれない荷物をかかえたあなたへ』アスク・ヒューマン・ケア
  • クラウディア・ブラック『私は親のようにならない』誠信書房
  • スーザン・フォワード『毒になる親』講談社
  • マーガレット・ラインホルド『親から自分をとり戻すための本』朝日文庫
  • ジョン・ブラッドショー『インナーチャイルド-本当のあなたを取り戻す方法』日本放送出版協会
  • 外川智子・船田真帆『私は私をあきらめない』メディアート出版

アダルトチルドレン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 
アダルトチルドレンとは、機能不全家庭で育ったことにより、成人してもなお内心的なトラウマを持っている人のことを指す。Adult Childrenの頭文字を取り、単にACともいう。学術的な言葉ではないため、論者により定義が異なる場合がある。

日本においては、1990年代にマスコミや、精神医学、臨床心理学を知らない知識人たちにかなり誤用された(参照:誤解と誤用)ために、近年はその本来的な意味をあらわすのにアダルトサヴァイヴァー / アダルトサバイバー(Adult Survivor)が使われるようになってきている。

一般には、親による虐待や、アルコール依存症の持つ親がいる家庭や機能不全家庭で育ち、その体験が成人になっても心理的外傷として残っている人をいう。破滅的であったり、完璧主義であったり、対人関係が苦手であるといった、いくつかの特徴がある。成人後も無意識裡に実生活や人間関係の構築に、深刻な悪影響を及ぼしている場合も多いが、日本においては2009年現在、未だ一般社会による認知度は低い。

定義の変遷 [編集]

発祥 [編集]

語の発祥は「Adult Children of Alcoholicsアルコール依存症の親のもとで育ち、成人した人々)」であった。この言葉は、1970年代アメリカの社会福祉援助などケースワークの現場の人たちが、自分たちの経験から得た知識により作り出したものであり、学術的な言葉ではなかった。

発展 [編集]

その後、アメリカのソーシャルワーカークラウディア・ブラックの研究により、単にアルコール依存症のもとで育った子供だけでなく、機能不全家庭で育つ子供が特徴的な行動、思考、認知を持つと指摘された。この考えは、「Adult Children of Dysfunctional Family(子供の成育に悪影響を与える親のもとで育ち、成長してもなお精神的影響を受けつづける人々)」というものであり、現在もっとも広く支持されているアダルトチルドレンの定義となっている。

今日の用法 [編集]

また近年では、「幼少時代から親から正当な愛情を受けられず、身体的・精神・心理的虐待を受け続けて成人し、社会生活に対する違和感があったり子供時代の心的ダメージに悩み、苦しみをもつ人々」を総称して、メンタルケア心理療法)が必要な人をアダルトチルドレンと呼ぶこともある。

しかし、日本においては1990年代にマスコミなどによって誤用が進み、もはや原義を離れたところで一人歩きしてしまったために、今日では専門家のあいだではアダルトサヴァイヴァー(Adult Survivor)というケースが増えてきている。

精神疾患との関連性 [編集]

アダルトチルドレンは精神医学的な概念ではないため、診断名にならない。ただしその症状により、境界性人格障害依存性人格障害自己愛性人格障害回避性人格障害等の人格障害として診断される。

誤解と誤用 [編集]

「アダルトチルドレン」を「子供っぽい行動をする大人」「大人になりきれていない子供」といった意味で使用するのは誤用である。

Adult Childrenをしいて日本語に訳せば「大人になった子供」となるが、この場合の「子供」とは年少者(kid)の意味ではなく、親に対する子(息子、娘)の意味である。

2001年セガは大人げない性格を表現する意図で「アダルトチルドレン」と命名されたキャラクターが登場するドリームキャスト用ソフト「セガガガ」を自社の通信販売サイトで販売していたが、「日本アダルトチルドレン協会(JACA)」、「アルコール薬物問題全国市民協会(ASK)」、「アディクション問題を考える会(AKK)」が誤用を指摘。セガ側はキャラクター名の変更、通信販売サイトでの一時販売停止、一般店頭販売予定日の延期を行った[1]

主な現象と注目点 [編集]

条件付きの愛情 [編集]

本来、親は子供に無条件で愛情を注ぐものであるが、親の愛情が無条件の愛ではなく、何らかの付帯義務を負わせる「条件付きの愛」であることが問題となる。これが継続的に行使される家庭では、子供は親の愛を受けるために、常に親の意向に従わなければならず、親との関係維持のために生きるようになり、この時点で親子関係は不健全であるといえる。主に幼少期からこうした手段が用いられ始め、子供の精神を支配する手段として愛情を制限する。

この手段は子供が成人する段階になっても継続され、引き続き成人した子供(Adult Children)の精神を支配する。実はこの状況は非常に多くの家庭に存在しており、子供は常に不健全な状況にさらされている。しかし、第三者からは一見してこのような家庭は何ら問題のない普通の家庭として認識される場合が非常に多く、「条件付きの愛」はしつけや教育と称される家庭の病理性の深さを象徴する現象であり、最も基本的な精神的虐待である。しかし現実に、無条件の愛を常に実行できるかというと、これは極めて難しく、健全な家庭を目指すには「条件付きの愛」を減らし、可能な限り無条件の愛を与える方法を親自身が訓練・勉強する必要があるだろう。

虐待について [編集]

家庭内環境(家庭問題)において、身体的虐待暴力近親姦などで顕在化しやすいが、親から子への愛情の不足や心理的虐待は第三者からは非常に察知しづらい面が問題とされる。特に精神的虐待を行っている親当人は自身の子供に対する言動が、虐待であることに気づいていないケースが多い。よって肝心の幼少期・成長期に問題を発見することは非常に困難である。よって成人し自立した後、年齢を問わずACの苦しみの出現によって、精神的疾病にまで発展することもある。

精神的虐待は、しつけ虐待かの境界線が重要な注目点である。その判断は、あくまで親の処置を子供がどのように受け取っているか、という立場で点検する。特に親の側が良かれと思い対処したことが、子供にとっては強要と解釈されるケースを注目する。強要と受け取られた場合、場合によって子供の心に萎縮をまねき、結果として精神的虐待となる。この意思疎通のズレが問題とされる。

共依存 [編集]

ACの精神的虐待の象徴的特徴として、共依存co-dependency)があげられる。

典型的な例として、親が強力に子供の精神を支配する行動が、子供の方も支配されたいという特異な感情を生み出し、親も子供も支配し支配されることに奇妙な安心感を見出して、支配を通して相互依存するという現象がある。これは子供にとって支配に反抗するより支配を受け入れる方が家庭内で波風を起こさなくて済むため、平穏な環境でいるためのサバイバル手段と解釈されている。

通常、子供はある年齢に達すると親の支配から脱しようと試みるのが自然な形態であるが、この相互依存関係が強い場合親子関係は成人してもなお、支配の相互関係という不健全な状態が続く。

よりわかりやすい表現で表せば、子離れせずに子供を人生の目的とし続ける親とそれを受け入れ続けざるを得ない精神構造を埋め込まれた子供、ということになる。これがひどい場合は親が死亡するまで関係を健全化することができず、極端な例として女性の場合は母親が死ぬまでともに暮らす、つまり一生結婚の機会を奪われることもある。

ACの特徴的な心理パターン [編集]

  • 正しいと思われることにも疑いを持つ。
  • 物事を最後までやりぬくことが困難。
  • 本音を言えるような場面でをつく。習慣的にをついてしまう。
  • 自分を情け容赦なく批判する。自己処罰癖、自罰傾向がある。
  • 自分のことを深刻に考え過ぎる。
  • 様々なことをリラックスして楽しむことや遊ぶことが出来ない。
  • 他人と親密な(心の通った)関係が持てない。
  • 環境の変化に過剰反応する。
  • 常に他人から肯定され、受け入れられることを求めている。
  • 他人からの承認、賛同、称賛を必要とする。
  • 自分は他人とは違っていると感じている。
  • 過剰に責任を持ったり、逆に、過剰に無責任になったりする。
  • 従うことに価値がない場面でも、従いがちである。
  • 衝動的で、ひとつのことに閉じこもる。
  • 衝動的であるためトラブルが多い。
  • 離人感、自分が自分でなくなるような感覚。
  • 身体性が希薄。
  • 他人への依存。
  • 自立的な判断と思考の欠如・周囲の期待に合わせようとする。
  • 自分を殺して違う自分に成り代わり、期待されている自分を演技してしまう。
  • ストレートに「嫌です」が言えない。
  • 甘えと愛情、依存としがみつきの区別がつかない。
  • 妄想を持つことがある
  • 喜怒哀楽の表現が不得手で感情の波が激しい。
  • 無力感を訴え、心身症に陥りやすい。
  • 自分の判断に自信が持てない。
  • 傷つきやすく、閉じこもりがち。
  • 孤独感、自己疎外感が強い。
  • 自分にはどうにも出来ないことに過剰反応してしまう。
  • 世話やきに熱中しやすい。

ACの習慣化された思考 [編集]

  • 先取り不安と時間感覚の障害 - まだ起きていない悪い未来への不安に縛られてしまう。また「自分の将来に待っているのは悪い未来ばかり」としか思えない。
  • 見捨てられ不安 - 良い子の自分でいないと、好きな人から嫌われてしまい、愛してもらえないと思い込む。
  • マインド・リーディング(Mind Reading)- 相手の言動や表情から「自分は嫌われている」「私がこの人を不快にさせてしまった」など、悪い答えばかりを引き出してしまう読心術。
  • 承認欲求と愛されたい願望 -「認められたい」「愛されたい」という他者への過度の欲求で、自分自身を混乱させてしまう。
  • テスティング(Testing)- 相手を困らせたり不快がらせる言動をわざとして、自分への愛情度を測る「試し行動」。
  • 親密感と距離感の問題 - 他者との関係が、くっつき過ぎか離れ過ぎかのどちらかになってしまい、適度な距離感が実感できず、維持出来ない。
  • 対人恐怖 - むしろ相手との関係が親密になってゆく過程で出てくる問題で、表面的な関係では極度な対人緊張として感じる。
  • 自他境界の問題(Personal Boundary Problems)- 他者の感情や行動上の問題に、自ら巻き込まれてしまう。あるいは逆に自分の感情や行動へ相手を巻き込んでしまう。
  • 白黒思考 - オール・オア・ナッシング(All or Nothing)で、自分の中にいつも二者択一の選択肢しかない。灰色(中間)の選択肢もあると考えられない.
  • 完璧主義Perfectionism)- 白黒思考と似た考え方で、「全ての準備」 や「成功への約束」が整わないと、何もしない完璧主義者になりやすい。過剰に自責的な一方で無責任とも言える。
  • パワーゲーム思考 - 人間関係を「優・劣」「上・下」「勝ち・負け」の尺度で見てしまう。しかも多くの場合、自分が「劣」「下」「負け」側になっている。
  • 自己主張の問題 - 嫌なことを「イヤ」と相手に言えなかったり、正当な欲求や要求を「自分のわがまま」だと思い込んでしまい、言葉にして伝えることが出来ない。
  • 責任感の問題 -「この場をつまらなくさせているのは自分がいるからだ」など、過剰で不要な責任を感じてしまう反面 、果たす必要がある責任を放棄してしまう。
  • 自分の感覚や感情への不確実感 - 「好きだ」「嫌だ」と感じた自分の感覚や怒りなどの自分の感情に、「そう感じた通りで正しい」という実感が持ちにくい。
  • 怒りの感情と、その表現の仕方(伝え方)の問題
  • 淋しさの感情と、その感情とのつきあい方の問題
  • 問題自体の否認やコントロール欲求の強さ

対人恐怖症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

対人恐怖症(たいじんきょうふしょう)は、恐怖症のひとつであり、患者は社会的接触を恐れ、それを避けようとする症状を示す。また、その結果として、社会的生活に支障をきたしたり、生活において必要な人間関係の構築が十分できなくなったりする。日本特有の文化依存症候群とされ、そのままTaijin kyofusho symptoms (TKS) と呼称されている。

個々の症例により、以下とおりさまざまに呼称されるが、それを包括するものである。

西洋社会において一般的な、自身に対する攻撃や、社会的な不器用さのため他人によって非難されると言った他律的な恐怖より、むしろ他人を傷つけるか、迷惑をかける、怒らせてしまう自分自身に対する自律的な恐怖という症状が見られる。ルース・ベネディクト的な、「文化(guilty culture)」に対する、「の文化(shame culture)」の表出とも解される。対人恐怖症は引きこもりを伴うことが多い。

社会恐怖としばしば同一視されるが、必ずしもイコールではなく、回避性人格障害や身体表現性障害などの他、精神疾患とも概念的に重複しうるディメンション的な疾患であるとも言われている。

治療 [編集]

日本においては、神経症の治療法として知られる森田療法が効果を上げている[1]

脚注 [編集]

  1. ^メンタルヘルス岡本記念財団 メンタルニュースNO.17「入院 森田療法の今日的な意味 ―慈恵医大「森田療法室」の治療統計から―」

関連事項 [編集]

場面緘黙症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 
場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)とは、家庭などでは何の問題もなく話すことができるのに、社会不安(社会的状況における不安)のために、学校や幼稚園といったある特定の場面、状況では全く話すことができなくなる現象を言う。幼児期に発症するケースが多い。 別名、選択性緘黙症。英語名、Selective Mutism


症状 [編集]

概要 [編集]

場面緘黙は、ある特定の場面でだけ全く話せなくなってしまう現象である。子供が自宅では家族らと問題なく会話をしていても、学校や幼稚園など家の外では全く、あるいはそれほど話さず、誰とも話さないという例は多い。そして、その子供は非常に内気な様子に見え、グループでの活動に入りたがらなかったりする。 たいていの場合、発話以外の、表情や動作やその他のやり方であれば、人とコミュニケーションを取ることができる。また、行動面や学習面などでも問題を持たない。

単なる人見知り恥ずかしがり屋との大きな違いは、症状が大変強く、何年たっても自然には症状が改善せずに長く続く場合があるという点である。

経過 [編集]

場面緘黙の経過は子供によって異なるが、効果的な教育的介入によって1、2年で克服することもある。また、長い間治らない例はあまりないが、効果的な教育的介入を行わないと、小学校、中学校、高校、成人まで継続することもある。早期に適切な教育的介入を行うことが大切である。

また、場面緘黙児を青年期や大人になるまで追跡した調査は少ないが、その調査によると、子供の頃に場面緘黙の治療を受けたことがある成年や大人のうち、約半数が「現在は何の問題もない」と報告している。しかし、残りの半数は、同年齢の一般の人たちに比べて「自信が無く、自立心に欠け、大人になりきれていない」と表現している。

発症年齢 [編集]

一般的に、2~5歳の間に発症する。しかし多くの場合、6~8歳になるまで診断や治療はほとんど行われていない。これは、疾患に対する理解度の不足などにより、単なる引っ込み思案といった性格的原因との区別がつけにくいためである。

発症率 [編集]

現状ではあまり明確になっていない。

1998年の調査では小学校低学年では全体の2%がこの症状を持っているという報告がされた(Kumpulainen et al., 1998)。また、性別では女の子の方が男の子より1.5~2倍の割合となっている(Steinhausen and Juzi, 1996)。

アメリカの精神医学誌The Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatryの2002年の調査では、その発生率は1000人中7人の割合とされた。

診断 [編集]

場面緘黙症の判断基準について、2つの主流の分類を以下に示す。

ICD-10 [編集]

選択性緘黙症とは、話す際に著しい、感情的に断固とした選択性があるのが特徴であり、子供がある若干の状況で言語能力を示すが、別の(定義可能な)状況では話すことができないものである。この障害は、通常、社会不安障害引きこもり過敏症または治療に対する抵抗などを含む、際立った個性機能と関係している。

ただし以下は除外する:

DSM-IV [編集]

場面緘黙症(選択性緘黙症)

  • 他の状況では話すことができるにもかかわらず、ある特定の状況(例えば学校のように、話すことが求められる状況)では、一貫して話すことができない。
  • この疾患によって、学業上、職業上の成績、または社会的な交流の機会を持つことを、著しく阻害されている 。
  • このような状態が、少なくとも一ヶ月以上続いている。(これは、学校での最初の一ヶ月間に限定されない)
  • 話すことができないのは、その社会的状況において必要とされている話し言葉を知らなかったり、また、うまく話せない、という理由からではない。
  • コミュニケーション障害(例えば、吃音症)では説明がつかず、また、広汎性発達障害統合失調症またはその他の精神病性障害の経過中以外にも起こるものである。

付随する問題 [編集]

場面緘黙児のほとんどは、それ以外になんらかの不安に関連した病名を診断されている。多く見られるのが、社会恐怖症、分離不安、完全主義的傾向、強迫的傾向などである。また、病名はないが、特徴的な問題も含めて以下に挙げる。

社会恐怖症 [編集]

社会恐怖症の子供は、他人からの否定的な評価を恐れ、自分が何かみっともないことを言ったり、したりするのではないかと過度に気を遣う。具体的には、友達と遊ぶのを避けたり、人前で食べられなかったり、公衆トイレが使えなかったりする。 しかし、場面緘黙症と社会恐怖症の関連はまだきちんと解明されているわけではない。大きな違いは、場面緘黙の発症の多くが2~4歳であるのに対し、社会恐怖症では10~11歳にならないと現れない点、また、場面緘黙児が、非言語的な手段ではコミュニケーションを問題なくとれるのに、社会恐怖症の場合はあらゆる面での社会的交流に不安を感じている点がある。

分離不安 [編集]

学校へ行くとき親と離れるのを嫌がる、親と別室で寝るのを嫌がる、自分自身や大好きな親に何か悪いことが起きるのではないかと心配する、などの問題を抱えていることもある。これは場面緘黙児の約20~30%にのぼると言われている。

完全主義、強迫的傾向 [編集]

不安や苦痛を伴う固定観念や思考をし、自分の周囲をいつも決まった状態に保つことにこだわったり、失敗に対して過度に神経質になったりする。

学校のトイレを使うのが怖い [編集]

これは、先生に許可をもらうこと、皆の注目を集めることなどが場面緘黙児にとって不安を感じるためである。

反抗行動のようにみえる回避行動 [編集]

場面緘黙児は、一見すると反抗的で支配的で人を操っているかのように見えることがある。 しかし、このような行動を起こすとされる場面緘黙児も、不安のない状態においてはそのような行動をみせない。 このことから、これらの行動は不安による行動であることがわかる。つまり、わざと規律に逆らっているのではなく、恐怖を感じる場面を回避するために、指示に従わなかったり、規律を守らなかったりしているにすぎない。

原因 [編集]

場面緘黙症の子供の多くは、先天的に不安になりがちな傾向がある。また、内向的な性格であることが多く、これは偏桃体と呼ばれる領域が過剰に刺激されることによると考えられている。この領域は、脅威の兆候を感知すると「闘争・逃避反応 (fight-or-flight response)」を引き起こす。

場面緘黙症の子供には、感覚情報の処理に問題のある、感覚統合障害(SID)と呼ばれる障害を持つ者もいる。これは不安を引き起こし、子供は「閉鎖」させられて話すことができなくなる。

場面緘黙症の子供のうちおよそ20~30パーセントは、会話障害あるいは言語障害をも併せ持っている。このことによって、子供は話すことが要求される場面でストレスを感じる。また、両親の母語が異なる子供や、言語の異なる外国に暮らす子供、幼少期に外国語にさらされた子供は、話すことが要求された言語について自信を失ってしまうことがある。いずれの場合も子供は内向的な性格を示すが、このような言葉の問題によるストレスは、子供を緘黙にしてしまうのに十分な不安の原因となる。

場面緘黙症の原因が虐待ネグレクト心的外傷によるものであるとは限らない。場面緘黙症の子供は、全く話すことができない状態に症状が進行するケースもあり得るが、ほとんどの場合、場面によっては話すことができる。一方、心的外傷による緘黙は、通常、突然あらゆる場面で話すことができなくなる。

治療 [編集]

場面緘黙症は、必ずしも年齢とともに自然に改善されていくわけではない。そのため、低年齢のうちに治療を受けることがとても重要である。そのままにしておくと、周りの人はその子は話さない子と考えるため、緘黙症状そのものが強化されてしまい、話すことがますます難しくなってしまう。このような場合は、誰もその子のことを知らない場所に環境を移すこと(転校等)で状況が好転することも時にはありうる。

10代での治療は、必ずそうだというわけではないが、より難しくなる。

子供に無理に話させようとしてもうまくいかない。そんなことをすれば、不安の程度をよけいに強めてしまい、緘黙症状が強化されるだけである。緘黙の子供は、外からは、片意地を張っていてわざと話さないように見えることがよくある。というのも、子供はそういう状況で、コミュニケーションやボディランゲージを全くしなくなってしまうため、見る人には失礼な行為と受けとられてしまうのである。

適切な治療は、子供によって、年齢やその他の要因によって非常に異なる。 年齢の低い子供に対しては、刺激フェイディング法が行われるのがアメリカやイギリスなど欧米では一般的である。

薬物治療については、精神医学界でも意見が分かれている。不安を取り除く薬はきわめて少量で効果があり、服用量が多すぎる場合だけが問題なのだと考える人たちがいる一方で、 子供に対して、精神薬の副作用はたいへん危険であるため、少量であっても、たとえ一時的効果があったとしても使用すべきではなく、行動療法的なまた心理療法的な取り組みのほうが好ましいと考える人たちもいる。

刺激フェイディング法 [編集]

この方法では、患者はまず、コミュニケーションがとれる安心できる人といっしょに、条件が整えられたある状況設定の中におかれる。 治療上のたくさんの小さなステップを用意しながら、その状況設定の中に徐々に他の人を招き入れる。

これらのステップは、それぞれ段階別によく用いられる。「すべり込み手法(スライディングイン・テクニック」と呼ばれるもので、新しい人をすでに話している人のグループにすべり込ませていく方法である。この方法で、初めの1人や2人から、しだいに多くの人たちへと移って行くには、比較的長い時間がかかる。

脱感作療法 [編集]

次のステップへの心の準備を整えるために、最初は間接的なコミュニケーションでも良いとする。たとえば、より直接的なコミュニケーションに挑戦する前に、Eメールや電話、テープへの録音などの方法がある。

薬物治療 [編集]

フルオキセチン(fluoxetine)のような抗鬱剤が、場面緘黙症の子供の治療に効果的であることを示すいくつかの学術的証拠があると考えている開業医もいる。 フルオキセチン以外の精神薬についても、不安を軽減しコミュニケーションを促す精神薬は場面緘黙症に効果があると、多くの医学界の人たちが考えている。しかし、子供に対する精神薬の使用に対して厳しく反対し、精神薬が様々な行動障害の発生に関与するという医学的証拠はまだ得られていないと指摘する開業医や活動家《Peter Breggin・David Healy を参照》もいる。行動不安障害の子供に対する向精神薬の投与に関する告発は、複数の製薬会社への民事訴訟(2005年継続中)以来、特に強まってきた。製薬会社は、非公開内部調査文書を事前に提示したが、その内容はフルオキセチン(fluoxetine)や他の抗うつ剤であるSSRIと、自殺や精神病、言語の発音や正常な社会性発達のための脳の部位へのダメージ等の危険性を増加させるというものだった。

from en:selective mutism(19:40, 5 January 2007)より部分的に翻訳。

治療の実施に関する問題 [編集]

現実性 [編集]

治療には教育的介入が必要となる。しかし、その手法がほとんど広がっておらず、治療経験のある専門家も少ない。また、手法があっても、日本の場合は学校組織が強固で、柔軟な対応がとりにくいことが予想される。

限定された有効性 [編集]

場面緘黙の治療実績が多くあり、かつ効果の高い治療法が行動療法である。しかし、場面緘黙の形成機序から考えると、その有効性は限定される。つまり、治療のタイミングとしては、症状が重篤化する前の初期段階でなければならず、必然的に低年齢であることが必要となる。

診断の難しさ [編集]

診断時に別の疾患と混同されることがある。たとえば、自閉症スペクトラム障害やアスペルガー症候群との鑑別診断は難しい。特に心理士の前で子供が人に対して関心を示さない様子である場合に誤診されることがある。

誤解と名称変更の経緯 [編集]

場面緘黙症の英語名“selective mutism”は、以前に“elective mutism”という名称だった。この名称のために「ある特定の状況で話さないことを自分の意志で選んでいる」と、心理学者でさえ誤解するような状況が広まってしまった。 しかし、場面緘黙症の人たちは、話そうとしても、極度の不安のためにどうしても声が出ないのであり、故意に話さないわけではない。DSMでは1994年、故意に話さないのではなく、話すことができないのだと言うことを示すために、“selective mutism” と改称された。 しかしながら、これに類する誤解が、今なお多く流布している。例えば、2005年5月26日のABCニュースでは、ニュースリポートの中で、この疾患の原因はトラウマであるとか、わがままで故意に話さないためなどと、誤った報道があった。

参考文献 [編集]

  • アンジェラ E.マクホルム, チャールス E.カニンガム, メラニー K.バニエー『場面緘黙児への支援―学校で話せない子を助けるために 』 河井 英子, 吉原 桂子/共訳、田研出版株式会社、2007年、191頁。

外部リンク [編集]

関連項目 [編集]

 
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