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どぶろく
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
どぶろく(濁酒)とは炊いた米に米麹や酒粕等に残る酵母などを加えて作る酒である。濁り酒(にごりざけ)とも言われることがある[1]。
非常に簡単な道具を用いて家庭で作る事も可能だが、日本では酒税法において濁酒(だくしゅ)と呼び、許可無く作ると酒税法違反に問われる事になる。
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概要 [編集]
この酒は米を使った酒類では最も素朴な形態の物と言われ、一般の酒店でも購入可能な濁り酒に近い。これを沈殿濾過する事で清酒を作る事も可能だが、清酒になる程には漉さずに飲用する。清酒に比べ濾過が不十分であるため、未発酵の米に含まれる澱粉や、澱粉が分解した糖により、ほんのり甘い風味であるが、アルコール度は清酒と同程度の14~17度にもなるため、口当たりのよさがあだとなってつい飲み過ごして悪酔いしやすい。
どぶろくの語源は定かではない。平安時代以前から米で作る醪の混じった状態の濁酒のことを濁醪(だくらう)と呼んでいたのが訛って、今日のどぶろくになったと言われる[2]。
どぶろくの起源についても諸説あり、中国の揚子江/黄河流域の稲作文化の直接伝播(紀元前3500年ごろ)に伴って伝わったという説や自然発酵による独自の発生説など諸説ある。どちらにせよ、3世紀後半の魏志倭人伝には倭人は酒を嗜むといった記述があり、どぶろくの歴史は長い。
なお、マッコリを日本のどぶろくや日本酒のルーツとする記載がネット上で散見されるが、そもそも使用する麹が異なっている(マッコリは麦麹、どぶろくは米麹)ので、両者は醸造学的に異なる歴史を歩み発展した別系統の酒であるとする見解がほとんどである。最近の説では、稲作の伝播が朝鮮半島では北方を伝わって紀元前2000~2500年頃であるのに対して日本への伝播時期が南方を通じて紀元前3500年頃であるというものもあり、だとすれば一層両者は別個の物と言える。
家庭でも簡単に作る事ができるが、違法行為(酒税法違反)であるため、転じて密造酒の別名としてこの言葉が用いられる事もある。この事から隠語で呼ばれる事も多くどぶや白馬(しろうま)、溷六(どぶろくまたはずぶろく)といった呼び方も地方によっては残されている。なお溷六と書くと、泥酔状態にある酔漢の事を指す別の言葉にもなる。
日本におけるどぶろく作りの歴史は米作とほぼ同起源であると云われるが、明治時代においては政府の主要な税収源であった酒造税(1940年以後、酒税)の収入を減らす要因であるとして、農家などで自家生産・自家消費されていたどぶろく作りが酒税法により禁止され、現在に至っている。しかし家庭内で作る事のできる密造酒でもあるため摘発は非常に難しく、米どころと呼ばれる地域や、酒を取り扱う商店等の少ない農村などで、相当量が日常的に作られ消費されていたとする話もある。むしろ、実際の禁止理由は日清・日露戦争で酒税の大増税を繰り返した際にその負担に耐え切れないとする醸造業者に増税を許容してもらうための一種の保護策であったと考えられている。
一部では自家生産・自家消費に限ってどぶろく作りを解禁しようという動きもあるものの、解禁には程遠いのが現状である。なお、酒税法上の罰則規定に拠れば、製造するだけでも5年以下の懲役または50万円以下の罰金となっている。
だが、日本では古来より、収穫された米を神に捧げる際に、このどぶろくを作って供える事で、来期の豊穣を祈願する伝統を残す地域があり、この風習は現代でも日本各地のどぶろく祭等により伝えられている。このため宗教的行事におけるどぶろくの製造と飲用は、許可を受ければ前出の酒税法罰則適用外(酒税は課税される)となる。この場合、神社の境内等の一定の敷地内で飲用するものとする。
また酒造の制限は税制上の理由であり、所得税などは申告税制になっていることから家庭内酒造についても申告納税さえすれば自由に認めるべきであり、脱税酒についてのみ取締りをするべきであるという根強い意見もある。
製造方法 [編集]
※家庭で製造・自家消費する場合でも、酒税法により処罰される可能性があります
- 良く研いだ白米を水に浸し、少量の飯を布袋に包み同じ容器に浸す
- 一日一回浸けた袋を揉む
- 三日程度置き、甘酸っぱい香りがしてきたら、水(菩提酛)と米を分け、米を蒸す
- 蒸した米を30度程度に冷やしてから米麹を混ぜ、取り置いた菩提酛と水を加える(初添え)
- 一日一回かき混ぜ、二日程度置く
- 白米を蒸し、30度程度に冷やしてから麹と水を混ぜ、加える(中添え)
- 翌日も同様に仕込む(留添え)
- 一日一回かき混ぜ、一、二週間発酵させた後、布巾などで漉して出来上がり
菩提酛には乳酸菌と酵母が含まれ、乳酸菌の生成する乳酸が雑菌の発生を抑え、麹の分解酵素により生成された糖を酵母が分解しアルコールが生成される(並行発酵)。また、米・麹の投入を複数回に分けることにより、糖度及びアルコール度数の高さによる酵母への影響を抑えて、度数の高い酒の製造を可能にしている(複発酵)。一部では、発酵を安定促進させるためにイーストを加えたり、少量のヨーグルトを加える事もある。なお発酵途中には炭酸ガスが発生するため、密閉容器で作る場合は時折ガス抜きするにしても耐圧性のある容器が望ましい。密閉できない容器の場合は雑菌が入ると腐敗するため注意を要する。使用する水は一度沸騰させた湯冷ましか井戸水(ミネラルウォーターも可)を使用する。
加熱殺菌処理されていない生酒であるため、保存は難しいとされ、もろみを濾した後は冷蔵し、早めに消費しないと、雑菌が繁殖するなど、すぐ飲用に適さない状態になると言われている。
なお、濾した物を暫く沈殿させ、上澄み、中澄みと分けてくみ取る場合があり、上澄みで透明感があるほど良いともいわれている。
どぶろくと祭(どぶろく特区) [編集]
豊穣祈願などの宗教行事や地域産品としてのどぶろくを製造する地域は日本各地に存在する。
このようなどぶろく作りでは、地域振興の関係から、2002年の行政構造改革によって、構造改革特別区域が設けられ、同特別区内でのどぶろく製造と、飲食店や民宿等で、その場で消費される場合に限り、販売も許可されている(通称「どぶろく特区」と呼ばれる)。
しかし同特別区外へ持ち出す事になる「みやげ物としての販売」に関しては、酒税法が適用されるため、酒類製造と販売の許可が必要となる。また、実際には酒税法にて最低醸造量として定められている年間6キロリットル(一升瓶にして約3,326本)という制限を撤廃したのみで、アルコール度数の検査等々、酒税法に記される検査はあまり変わっていない。
なお、どぶろく特区となっている地域は、以下列記しているように主に祭などのいわゆる行事に使う目的で製造している地域と、山形県飯豊町のように特定の箇所で常飲させる地域に分けることができると考えられるが、どちらも最大の目的は地域振興である。
また、このどぶろく特区には課題があると考える人もおり、
- 特区認定に関して、地域限定等が無く、その方面でのハードルが低い。そのため多くのどぶろく特区ができ、あまり差別化が図れない
- 前述したように検査が煩雑で、小規模製造とするにはハードルが高い。
- 許可の公布については酒税法に準じているため縛りが多い。
などと、特区として未成熟であるという意見もある。
どぶろく特区である区域の例 [編集]
日本のどぶろく祭 [編集]
(省略)どぶろく裁判 [編集]
どぶろくの製造と自家消費に関しては、『どぶろくをつくろう』(農文協)の著者である前田俊彦が興した、通称どぶろく裁判が知られている。裁判では、食文化の一つである(と主張する)どぶろくを、憲法で保障された人権における幸福追求の権利において、自家生産・自家消費する事の是非に始まって、「酒税法上で設けられた様々な制限が、事実上において大量生産が可能な設備を保有できる大資本による酒類製造のみを優遇し、小規模の酒類製造業が育たないようにしている」という前田側の主張がクローズアップされている。
同裁判は最高裁判所にまで持ち込まれ、1989年12月14日に「製造理由の如何を問わず、自家生産の禁止は、税収確保の見地より行政の裁量内にある」として、酒税法の合憲判断と前田の有罪判決が出た。
関連項目 [編集]
脚注 [編集]
酒税法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
酒税法 | |
---|---|
通称・略称 | なし |
法令番号 | 昭和28年2月28日法律第6号 |
効力 | 現行法 |
種類 | 租税法 |
主な内容 | 酒税の賦課徴収 |
関連法令 | 消費税法、たばこ税法、アルコール事業法 |
条文リンク | 総務省法令データ提供システム |
酒税法(しゅぜいほう;昭和28年2月28日法律第6号)は酒税の賦課徴収・酒類の製造及び販売業免許等を定めた法律。1940年に制定された旧酒税法(昭和15年法律第35号)を全面改正する形で制定された。度数90度以上で産業用に使用するアルコールについてはアルコール事業法で扱われる。
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構成 [編集]
- 第1章 - 総則(第1条~第6条の4)
- 第2章 - 酒類の製造免許及び酒類の販売業免許等(第7条~第21条)
- 第3章 - 課税標準及び税率(第22条)
- 第4章 - 免税及び税額控除等(第23条~第30条)
- 第5章 - 申告及び納付等(第30条の2~第30条の6)
- 第6章 - 納税の担保(第31条~第36条)
- 第7章 - 削除(第37条~第39条)
- 第8章 - 雑則(第40条~第53条の2)
- 第9章 - 罰則(第54条~第62条)
税率政策 [編集]
かつては日本古来の焼酎を大衆酒と位置付けて低税率とする一方、ウイスキー、ブランデー等の洋酒は高級酒とされて高税率であった。これについて洋酒生産国から非関税障壁であるとの批判を受け、現在では焼酎とウイスキー、ブランデー、スピリッツはアルコール度数において等しい税率を賦課されている。
また、かつては日本酒は品質により特級・一級・二級の区分がなされ、高等級の酒ほど高税率を賦課されていた。等級審査は生産者の申請によるものであり、審査を経なければ二級酒として扱われた。そのため、特級や一級に相当する品質の酒について敢えて審査を申請せず、二級酒として販売する業者が増加した。そのため現在では公的な等級制度は廃止され、一律の税率が賦課されるようになっている。
現在ではビールに対する高税率を回避するために開発された、発泡酒や"第三のビール"の税率が引き上げられる傾向にある。
規制緩和 [編集]
かつては家庭においてリキュールを作る事さえ不可能な厳格な法律であった。1962年に改正され、家庭で梅酒などリキュールを作る事が可能となった。ただし漬け込むアルコールの度数は20度以上とするなど条件は厳しく例外規定的なものであり2007年6月14日、テレビ番組『きょうの料理』(日本放送協会)の「特集★わが家に伝わる漬け物・保存食~梅酒~」にて梅酒のつくり方を放送したが、そのレシピに従い個人が梅酒をつくると違法となることがわかり、後日、謝罪放送がされるという事態が発生した。
既存の小売業者を保護し酒税の安定した賦課徴収を図るために、新規参入者に対しては酒税法に基づく厳格な制限が課されていた。しかし、1998年3月に閣議決定された規制緩和推進3カ年計画に基づき、2001年1月に距離基準(既存の販売場から一定距離を保つ)が廃止され、2003年9月には人口基準(一定人口ごとに販売免許を付与)が廃止された。これにより酒類の販売が事実上「自由化」されたといわれているが、販売に当たり免許が必要であることに変わりない。
なお、酒類販売の「自由化」と同時に既存業者を保護することを目的とした議員立法(酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法)が制定され、かえって規制が強化された地域(特別調整区域)が存在するようになった。同法は2年間の時限立法であったため2005年8月に失効しているが、失効前の改正によって規制強化は2006年8月末日まで存続した。
酒税法上の分類 [編集]
法律改正により2006年5月より分類が変更され、一部の定義なども変更されている。
- 発泡性酒類
- 醸造酒類
- 蒸留酒類
- 混成酒類
改正前の定義 [編集]
なお参考として改正前の分類と定義を記す。
- 清酒
- 米、水及び清酒かす、米こうじその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの
- 合成清酒
- アルコール、しょうちゅう、清酒、ぶどう糖等を原料として製造した酒類で、その香味、色沢等が清酒に類似するもの
- しょうちゅう
- しょうちゅう甲類(ホワイトリカー(1))
- アルコール含有物を連続式蒸留機で蒸留したもので、アルコール分36度未満のもの
- しょうちゅう乙類(ホワイトリカー(2))
- アルコール含有物を蒸留した酒類で、アルコール分45度以下のもの(しょうちゅう甲類以外のしょうちゅう) 現在はしょうちゅう乙類はしょうちゅう甲類より優るという意味で本格しょうちゅうという言い方に変わった。
- ウイスキー類
- スピリッツ類
- リキュール類
- 酒類と糖類等を原料としたものでエキス分が2度以上のもの
- 雑酒