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国税庁
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国税庁(こくぜいちょう、英字表記:National Tax Agency)は、国家の歳入確保のため、所得税・法人税・相続税(以上、直接国税)、酒税・消費税(以上、間接国税)などの国税(中央税)の課税・徴収を行う財務省の外局である。財務省主税局が税制の企画・法制化などにかかわるのに対して、租税制度を執行する機関としての位置付けになる。
また、国税庁の地方組織として、11の国税局、1つの事務所、524の税務署が置かれている。税務署では、個人の場合、毎年2月中旬から3月中旬にかけて確定申告を行う。なお、法人の場合は決算期の終了から2カ月以内に確定申告することになっている。 なお、酒販免許・酒造免許などは税務署長が権限を持っており、国税庁(大蔵省→財務省)は、「酒」業界の所轄官庁でもある。
東京、大阪、名古屋の国税局には映画「マルサの女」で有名になった査察部がある。(その他の国税局は本庁と同じく調査査察部で査察業務を扱う。)
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沿革 [編集]
- 大蔵省主税局の一部など、徴税担当部門を母体として発足。
- 本庁は、総務部、直税部、間税部、調査査察部の4部制。
- 所在地は内幸町の東拓ビル。
- 1950年5月4日 - 国税庁協議団及び国税局協議団(後の国税不服審判所)設置。
- 1951年4月1日 - 国税庁次長を新設。本庁の総務部を分割して、長官官房と徴収部を設置。
- 1956年3月23日 - 旧大蔵省庁舎の接収解除により千代田区内幸町から移転。
- 1959年4月13日 - 間税部酒税課所属の醸造試験所を国税庁直属の附属機関とする。
- 1964年6月18日 - 税務講習所を税務大学校に拡充。
- 1970年5月1日 - 国税不服審判所発足(協議団廃止)。
- 1986年5月23日 - 長官官房国税審議官1名を新設。(国際業務を担当)
- 1991年7月10日 - 税目別の徴税体制から納税者別の徴税体制に移行。
- これに伴い、本庁の直税部と間税部を課税部に統合。
- 長官官房国税審議官を1名増員。(酒類行政及び酒税徴収事務の担当)
- 1995年7月10日 - 醸造試験所を東京都北区滝野川から広島県東広島市の広島中央サイエンスパークに移転し、醸造研究所に改組。
- 1998年7月10日 - 税務大学校の本校校舎を新宿区若松町と船橋市から埼玉県和光市に移転統合。
- 2001年1月6日 - 中央省庁再編により、国税庁は財務省の外局となる。
- 長官官房国税審議官は長官官房審議官に改称。(定員2名)
所在地 [編集]
組織 [編集]
幹部 [編集]
- 国税庁長官
- 国税庁次長
内部部局 [編集]
- 長官官房(官房長不置)
- 課税部
- 課税部長
- 課税総括課
- 消費税室
- 審理室
- 課税企画官
- 個人課税課
- 資産課税課
- 法人課税課
- 酒税課
- 酒税企画官
- 資産評価企画官
- 鑑定企画官
- 徴収部
- 徴収部長
- 管理課
- 徴収課
- 調査査察部
- 調査査察部長
- 調査課
- 国際調査管理官
- 査察課
審議会等 [編集]
施設等機関 [編集]
特別の機関 [編集]
地方支分部局と管轄 [編集]
現役の在籍幹部 [編集]
歴代の国税庁長官 [編集]
- 長官空席時の国税庁長官心得はいずれも国税庁次長が兼務
- 前職は特段記載無ければ大蔵省(財務省)職責、同末尾に※印を付したのは長官退任後に大蔵事務次官を務めたことを指す。
代 | 氏名 | 前職 | 在任期間 | 退任後の主要な役職 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 高橋衞 | 広島財務局長 | 1949年6月1日 - 1952年12月27日 | 参議院議員、経済企画庁長官 | |
2 | 平田敬一郎 | 主税局長 | ※ | 1952年12月27日 - 1955年7月19日 | 日本開発銀行総裁 |
3 | 阪田泰二 | 理財局長 | 1955年7月19日 - 1956年7月6日 | 日本専売公社総裁 | |
4 | 渡邊喜久造 | 主税局長 | 1956年7月6日 - 1957年11月15日 | 公正取引委員会委員長 | |
5 | 北島武雄 | 管財局長 | 1957年11月15日 - 1960年4月12日 | 北海道東北開発公庫総裁 公正取引委員会委員長 |
|
6 | 原純夫 | 主税局長 | 1960年4月12日 - 1962年5月1日 | 東京銀行頭取、会長 | |
心得 | 白石正雄 | (国税庁次長) | 1962年5月1日 - 1962年5月16日 | 会計検査院長 | |
7 | 木村秀弘 | 防衛庁経理局長 | 1962年5月16日 - 1965年2月5日 | 日本専売公社総裁 | |
8 | 吉岡英一 | 理財局長 | 1965年2月5日 - 1965年11月16日 | 日本開発銀行総裁 | |
9 | 泉美之松 | 主税局長 | 1965年11月16日 - 1968年6月7日 | 日本専売公社総裁 | |
10 | 龜徳正之 | 大臣官房長 | 1968年6月7日 - 1969年8月6日 | 協栄生命保険社長、会長 学校法人東洋英和女学院理事長 |
|
11 | 吉國二郎 | 主税局長 | ※ | 1969年8月6日 - 1972年6月27日 | 横浜銀行頭取、会長 |
12 | 近藤道生 | 銀行局長 | 1972年6月27日 - 1973年6月26日 | 博報堂社長、会長 | |
13 | 安川七郎 | 日本銀行政策委員会委員 | 1973年6月26日 - 1975年7月8日 | 日本債券信用銀行頭取 | |
14 | 中橋敬次郎 | 主税局長 | 1975年7月8日 - 1976年6月11日 | 国土事務次官 地域振興整備公団総裁 |
|
15 | 田邊博通 | 銀行局長 | 1976年6月11日 - 1977年6月10日 | 沖縄振興開発金融公庫理事長 | |
16 | 磯邊律男 | 東京国税局長 | 1977年6月10日 - 1980年6月17日 | 博報堂社長、会長 | |
17 | 渡部周治 | 東京国税局長 | 1980年6月17日 - 1982年6月1日 | 関西電力副社長、関電産業社長 | |
18 | 福田幸弘 | 主税局長 | 1982年6月1日 - 1983年6月7日 | 参議院議員 | |
19 | 水野繁 | 証券局長 | 1983年6月7日 - 1985年6月25日 | 日本たばこ産業社長 整理回収銀行社長 学校法人東京経済大学理事長 |
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20 | 梅澤節男 | 主税局長 | 1985年6月25日 - 1987年6月23日 | 公正取引委員会委員長 | |
21 | 窪田弘 | 理財局長 | 1987年6月23日 - 1988年12月27日 | 北海道東北開発公庫総裁 日本債券信用銀行頭取、会長 |
|
22 | 水野勝 | 主税局長 | 1988年12月27日 - 1990年6月29日 | 日本たばこ産業社長 | |
23 | 角谷正彦 | 証券局長 | 1990年6月29日 - 1991年6月11日 | 中小企業金融公庫総裁 | |
24 | 尾崎護 | 主税局長 | ※ | 1991年6月11日 - 1992年6月26日 | 国民金融公庫総裁 国民生活金融公庫総裁 |
25 | 土田正顯 | 銀行局長 | 1992年6月26日 - 1993年6月25日 | 東京証券取引所理事長、社長 | |
26 | 濱本英輔 | 主税局長 | 1993年6月25日 - 1994年7月1日 | 北海道東北開発公庫総裁 全国労働金庫協会理事長 ロッテ副社長 千葉ロッテマリーンズ社長 |
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27 | 寺村信行 | 銀行局長 | 1994年7月1日 - 1995年5月26日 | 国家公務員共済組合連合会理事長 | |
28 | 小川是 | 主税局長 | ※ | 1995年5月26日 - 1996年1月5日 | 日本たばこ産業会長、横浜銀行頭取 |
29 | 日高壮平 | 証券局長 | 1996年1月5日 - 1997年7月15日 | 金融情報システムセンター理事長 | |
30 | 竹島一彦 | 経済企画庁長官官房長 | 1997年7月15日 - 1998年1月30日 | 内閣官房副長官補 公正取引委員会委員長 |
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心得 | 舩橋晴雄 | (国税庁次長) | 1998年1月30日 - 1998年1月31日 | 国土交通審議官 | |
31 | 薄井信明 | 主税局長 | ※ | 1998年1月31日 - 1999年7月8日 | 国民生活金融公庫総裁 |
32 | 伏屋和彦 | 金融企画局長 | 1999年7月8日 - 2001年7月10日 | 内閣官房副長官補、会計検査院長 | |
33 | 尾原榮夫 | 主税局長 | 2001年7月10日 - 2002年7月9日 | 国家公務員共済組合連合会理事長 | |
34 | 渡辺裕泰 | 財務総合政策研究所長 | 2002年7月9日 - 2003年7月8日 | 早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授 | |
35 | 寺澤辰麿 | 理財局長 | 2003年7月8日 - 2004年7月2日 | 独立行政法人都市再生機構理事長代理 駐コロンビア大使 |
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36 | 大武健一郎 | 主税局長 | 2004年7月2日 - 2005年7月13日 | 商工組合中央金庫副理事長 | |
37 | 木村幸俊 | 関税局長 | 2005年7月13日 - 2006年7月28日 | 損害保険料率算出機構副理事長 商工組合中央金庫副理事長 |
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38 | 福田進 | 主税局長 | 2006年7月28日 - 2007年7月10日 | 社団法人日本損害保険協会副会長 内閣官房副長官補 |
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39 | 牧野治郎 | 財務総合政策研究所長 | 2007年7月10日 - 2008年7月4日 | 損害保険料率算出機構副理事長 | |
40 | 石井道遠 | 財務総合政策研究所長 | 2008年7月4日 - |
国税庁長官表彰(国税庁長官賞・国税庁長官感謝状含む) [編集]
国税庁長官は、納税功労に対し表彰する最高の納税表彰として納税意識の高揚等、税務行政の円滑な運営に尽力に尽力した者に国税庁長官表彰を授与する。これに準ずる表彰として、国税局長表彰、税務署長表彰がある。 また、税に関する作文コンクールなどでも国税庁長官賞を授与することがある。 また、法人会等の運営に対する発展に寄与した功労者などには国税庁長官感謝状を贈られる。
その他の出身者 [編集]
- 品川芳宣:元高松国税局長、元筑波大学大学院教授、早稲田大学大学院教授
- 岡田至康:初代国税庁長官官房国際業務課長、元国税庁長官官房審議官、移転価格税制の専門家、税理士法人中央青山顧問、中央青山租税戦略研究所長
- 川田剛:元仙台国税局長、税理士、国士舘大学教授
- 野村興児:元国税庁調査査察部長、山口県萩市長
- 平岡秀夫:元国税庁課税部法人税課長、衆議院議員(山口2区・民主党)
- 三浦正顕:元次長、元国民金融公庫理事、元三傳商事社長
- 山村紅葉:女優
関連書籍 [編集]
- 落合博実『徴税権力~国税庁の研究』(文藝春秋、2006年)ISBN 9784163687408
関連項目 [編集]
外部リンク [編集]
サラリーマン税金訴訟
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最高裁判所判例 | |
---|---|
事件名 | 所得税決定処分取消請求事件 |
事件番号 | 昭和55(行ツ)15 |
1985年(昭和60年)3月27日 | |
判例集 | 民集39巻2号247頁 |
裁判要旨 | |
|
|
大法廷 | |
裁判長 | 寺田治郎 |
陪席裁判官 | 藤崎萬里 木下忠良 塩野宜慶 伊藤正己 谷口正孝 大橋進 木戸口久治 牧圭次 和田誠一 安岡満彦 角田礼次郎 矢口洪一 島谷六郎 長島敦 |
意見 | |
多数意見 | 全員一致 |
意見 | なし |
反対意見 | なし |
参照法条 | |
憲法14条1項、所得税法(昭和40年法律第33号による改正前のもの)9条1項、所得税法(昭和40年法律第33号による改正前のもの)10条2項、所得税法の一部を改正する法律(昭和39年法律第20号)附則 | |
サラリーマン税金訴訟(さらりーまんぜいきんそしょう)とは、所得税法の課税規定が給与所得者に不利であることを理由に課税処分の取り消しを求めて争われた裁判。原告の名前を取って大島訴訟とも言う。(最判昭60.3.27民39.2.247)
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概要 [編集]
私立大学の教授であった原告は、昭和39年分の所得に給与所得と雑所得があったが、確定申告をしなかったので、税務署長はこれを加算した決定と、無申告加算税の賦課決定処分をした。原告はこれを日本国憲法第14条第1項(法の下の平等)に違反し、したがって本処分も無効だとして出訴した。
原告の論点は以下の3つである。
- 所得税法が事業所得者には必要経費の控除を認めるのに対し、給与所得者にはそれを認めないのは不公平である。
- 給与所得と他の所得で所得の捕捉率に格差があり、給与所得者は不利益な扱いを受けていること。
- 他の所得者には各種の特別措置が設けられており、給与所得者は不公平な税負担を負っている。
一審京都地方裁判所、二審大阪高等裁判所とも原告の請求棄却。原告は上告審係属中に死亡したため、原告の子が裁判を承継した。
最高裁判所判決 [編集]
昭和60年3月27日大法廷判決は、原告の上告を棄却した。
- 「旧所得税法が必要経費の控除について事業所得者等と給与所得者との間に設けた前記の区別は、合理的なものであり、憲法一四条一項の規定に違反するものではない」
- 「所得の捕捉の不均衡の問題は、原則的には、税務行政の適正な執行により是正されるべき性質のものであつて、捕捉率の較差が正義衡平の観念に反する程に著しく、かつ、それが長年にわたり恒常的に存在して租税法制自体に基因していると認められるような場合であれば格別……そうでない限り、租税法制そのものを違憲ならしめるものとはいえない」
- 「仮に所論の租税優遇措置が合理性を欠くものであるとしても、そのことは、当該措置自体の有効性に影響を与えるものにすぎず、本件課税規定を違憲無効ならしめるものということはできない。」
なお、本判決には伊藤正己をはじめ4裁判官が補足意見を述べており、2裁判官が伊藤の意見に同調している。
その他 [編集]
なお、似たケースで、総評の指導の下に全国各地で提起された所得税返還請求訴訟については、「総評サラリーマン税金訴訟」と呼ばれる。これについては1件のみが上告審まで争われ、原告である労働者側が敗訴している(最高裁判所平成元年2月7日判決)。
判例評釈 [編集]
参考文献 [編集]
- 北野弘久『サラリーマン税金訴訟』(税務経理協会)
外部リンク [編集]
旭川市国保料訴訟
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最高裁判所判例 | |
---|---|
事件名 | 国民健康保険料賦課処分取消等請求事件 |
事件番号 | 平成12年(行ツ)第62号、同年(行ヒ)第66号 |
2006年(平成18年)3月1日 | |
判例集 | 民集60巻2号587頁 |
裁判要旨 | |
国民健康保険料の保険料率について、具体的に条例で定めずこれを告示に委任しても、憲法84条の趣旨に違反しないとされた事例 | |
大法廷 | |
裁判長 | 町田顯 |
陪席裁判官 | 濱田邦夫 横尾和子 上田豊三 滝井繁男 藤田宙靖 甲斐中辰夫 泉德治 島田仁郎 才口千晴 津野修 今井功 中川了滋 堀籠幸男 古田佑紀 |
意見 | |
多数意見 | 全員一致 |
意見 | なし |
反対意見 | なし |
参照法条 | |
憲法84条、14条、25条など | |
旭川市国保料訴訟(あさひかわしこくほりょうそしょう)とは、旭川市国民健康保険の一般被保険者である杉尾正明が、平成6年度分から平成8年度分の保険料について、条例で保険料率を定めず、これを告示に委任することが、租税法律主義を定める憲法84条またはその趣旨に反するなどとして、賦課処分の取消しを求めるとともに、同市の条例が恒常的に生活が困窮している者を保険料の減免の対象としていないことが生存権を定める憲法25条や法の下の平等を定める憲法14条に違反するとして、減免非該当処分の取消しを求めた訴訟である。最高裁大法廷は、平成18年3月1日原告の主張を退け、憲法に違反しないとした。なお、この訴訟は本人訴訟で最高裁まで争った訴訟としても有名である。
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法令の定め [編集]
旭川市国民健康保険条例(本件条例)における保険料率の定め方は、具体的な保険料率の定めは市長の告示に委任されていて、具体的な保険料率は条例においては規定されておらず、その代わり保険料率の算定方法を定めるのみであった。
事件の経緯 [編集]
被告である旭川市は平成6年7月14日、原告である杉尾正明氏に対し平成6年度分の国民健康保険料納付通知書を送付した。原告は、平成6年8月、自らの平成5年の収入は生活保護基準以下の収入であったことを理由に平成6年分の保険料の減免を申請したが、同月10日付で非該当の通知がされた。原告は、その後不服申立て手続等を経て、旭川地方裁判所に対し、平成6年度分から平成8年度分の保険料の賦課処分の取消しを主位的に求めるとともに、保険料の減免非該当処分の取消しを予備的に求めた。第1審(森邦明裁判長)は、本件条例は憲法92条及び84条に違反するとして賦課処分を取消したが、控訴審の札幌高等裁判所(濱崎浩一裁判長)は、租税法律主義をさだめた憲法84条が国民健康保険料には直接適用されず、その趣旨にも反せず、また、減免非該当処分も憲法25条に違反しないとして、原告の請求を退けた(平成7年度分については不服申立てを経ていないとして訴えを却下)。
これに対し、原告が最高裁に上告及び上告受理申立てを行い、平成18年3月1日最高裁大法廷が以下のような判決を言い渡した。
判旨(最高裁平成12年(行ツ)第62号、同年(行ヒ)第66号平成18年3月1日大法廷判決) [編集]
全員一致。上告棄却。
租税条例主義の適用について [編集]
- 国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてではなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんに関らず、憲法84条に定める租税に当たる。
- 市町村が行う国民健康保険の保険料は、被保険者において保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収されるものであるから、憲法84条の規定が直接に適用されることはない(国民健康保険税は形式が税である以上憲法84条の規定が適用される)。
- 租税以外の公課であっても、賦課徴収の強制の度合い等の点において租税に類似する性質を有するものについては、憲法84条の趣旨が及ぶ。
- その場合であっても、賦課要件が法律又は条例にどの程度明確に定められるべきかなどのその規律の在り方については、当該公課の性質、賦課徴収の目的、その強制の度合い等を総合考慮して判断すべきである。
- 市町村が国民健康保険の保険料も、憲法84条の趣旨が及ぶが、条例において賦課要件をどの程度明確に定めるべきかは、賦課徴収の度合いのほか、社会保険としての国民健康保険の目的、特質等をも総合考慮して判断する必要がある。
- 本件条例は、保険料率算定の基礎となる賦課総額の算定基準を明確に規定したうえで、その算定に必要な費用及び収入の各見込額並びに予定集能率の推計に関する専門的及び技術的な細目にかかわる事項を、市長の合理的な選択にゆだねたものであり、上記見込額の推計については国民健康保険事業特別会計の予算及び決算の審議を通じて議会による民主的統制が及ぶものということができるから、本件条例が、保険料率算定の基礎となる賦課総額の算定基準を定めた上で、市長に対し、同基準に基づいて保険料率を決定し、決定した保険料率を告示の方式により公示することを委任したことが憲法84条の趣旨に反するということはできない。
- 賦課総額の算定基準及び保険料率の算定方法は、本件条例によって賦課期日まで明らかにされており、恣意的な判断が加わる余地はなく、賦課期日後に決定されたとしても法的安定性が害されるということはできないから、市長が各年度の賦課期日後に保険料率を告示したことは憲法84条の趣旨に反するとはいえない。
憲法25条違反の主張について [編集]
- 国民健康保険法は恒常的に生活が困窮している状態にある者を生活保護法による医療扶助等の保護を予定しているなどの事情の下で本件条例が恒常的に生活が困窮している状態にある者を保険料の減免の対象としていないことは、著しく合理性を欠くということができず、経済的弱者について合理的な理由なく差別をしたものということができないから、憲法25条、14条に違反しない。
個別意見 [編集]
- 裁判官滝井繁男の補足意見
意義 [編集]
本件は、租税以外に関して租税法律主義がどこまで適用されるかについて、最高裁判所が初めて下した判決で、実務上重要な意義を有すると思われる。
関連項目 [編集]
外部リンク [編集]
国民健康保険料賦課処分取消等請求事件(平成18年03月01日 最高裁判決 判例検索システム)
資金洗浄
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資金洗浄(しきんせんじょう)とは、犯罪によって得られた収益金の出所などを隠蔽して、一般市場で使っても身元がばれないようにする行為である。「マネー・ローンダリング」(money laundering)の訳語。「ロンダリング」と伸ばさずとも間違いではないが、金融庁などの公的文書では「マネー・ローンダリング」で統一されている。略称は、「マネロン」。
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概説 [編集]
汚れた金(=規制薬物取引、盗品などの贓物(ぞうぶつ)取引、詐欺、脱税、粉飾決算、裏金などによって得られた収益)を、捜査機関による差押え・摘発を受けたりすることなどを逃れたり、新たな犯罪の資金源として利用したりする目的で、架空人または他人名義の金融機関口座などを利用して転々と送金を繰り返したり、または会社の債券や株式の購入、古典的な方法としては大口寄付など、その他合法的な財産と混和させるなどの方法が採られる。また、最近ではオンラインゲームでゲーム内経済を混乱させるとして問題になっているリアルマネートレーディング(RMT)行為なども、これに悪用されているのではないかという懸念が根強く指摘されている。
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件が発生した後、国際テロリズム組織「アルカーイダ」が資金洗浄行為を行っていたという疑惑が浮上し、各国の金融機関がテロリストのメンバーの口座を凍結する事となった。
関する主な歴史 [編集]
- 1988年12月 「麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約」(ウィーン条約)(麻薬新条約)採択。
- 1989年7月 アルシュ・サミット開催(フランス)。金融活動作業部会(Financial Action Task Force on Money Laundering, FATF)設立。
- 1990年4月 FATF、マネー・ローンダリング対策に関する「40の勧告」提言(1996年に改訂。警察庁による和訳)。
- 1995年6月 ハリファクス・サミット開催(カナダ)。薬物犯罪以外の重大犯罪に関するマネー・ローンダリング対策についても討議。
- 1996年6月 FATF「40の勧告」改訂 マネー・ローンダリング対策を、薬物犯罪からそれ以外の重大犯罪に拡大した。
- 1998年3月 バーミンガム・サミット開催(イギリス)。先進国間で、マネー・ローンダリング情報分析機関(Financial Intelligence Unit; FIU)の設置義務付け(日本は2000年2月に、金融監督庁(現在の金融庁)のもとに「特定金融情報室」を設置)。
- 2000年6月 FATF、マネー・ローンダリング対策に非協力的な15カ国・地域(Non-Cooperative Countries and Territories, 一覧)を公表。
- 2000年11月 国際組織犯罪防止条約(パレルモ条約)
- 2001年10月 9.11米国同時多発テロを契機に、テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約
FATF臨時総会、テロ資金供与に関する「8つの特別勧告」
- 2003年6月 FATF「40の勧告」改訂 非金融業者(不動産・貴金属・宝石等取扱業者等)、職業的専門家(法律家・会計士等) に対して、疑わしい報告義務を課す。
- 2006年10月 FATF、マネー・ローンダリング対策に非協力的で、特別の注意を払うべき国や地域は無くなったと発表した。
日本 [編集]
日本では、規制薬物取引に関する資金洗浄行為は「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」(平成3年法律第94号)、その他の資金洗浄行為および組織的な資金洗浄行為(不法資金による会社乗っ取り行為など)は、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(平成11年法律第136号)により、それぞれ禁止されている。
2004年には、アメリカのシティグループ傘下のシティバンク、エヌ・エイ在日支店(現シティバンク銀行)の富裕層の資産運用を助言するプライベートバンキング部門において、融資と債権の違法な抱き合わせ販売や株価操作のための資金提供、組織犯罪関係者の資金洗浄の手助けや匿名口座と知りながら大口顧客の口座開設などを行った不祥事が金融庁に摘発され、拠点の認可取り消しなど、金融庁の厳しい行政処分が行われたと同時に同部門の閉鎖、全面撤退が行われた(シティバンク、エヌ・エイ在日支店に対する行政処分について)。 また、金融口座は在日コリアンの持つ通名によっても開設できるため、これを利用した架空口座が資金洗浄などに悪用される恐れがあるとの指摘がある。
この様な悪質な資金洗浄の事例に対する対策を強化するため、2007年1月4日から本人確認法(金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正利用の防止に関する法律)施行令等が一部改正され、現金でのATM振り込み限度額が10万円に引き下げられ、ATMを用いて10万円を超える現金での振込みを行う際には、窓口にて本人確認書類を提示することが義務付けられた。
また、2003年に改訂されたFATF「40の勧告」を日本国内において実施することを目的として、2007年4月1日、犯罪収益移転防止法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)が一部施行された。これにより、従来金融庁に設置されていたFIU(特定金融情報室)が国家公安委員会(警察庁刑事局組織犯罪対策部犯罪収益移転防止管理官)に移管された。
関連項目 [編集]
- 経済犯罪
- タックス・ヘイヴン
- 暴力追放運動推進センター
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)
- 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織的犯罪処罰法)
タックス・ヘイヴン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
タックス・ヘイヴン (英:tax haven、仏:paradis fiscal) とは、税金が免除される、もしくは著しく軽減される国・地域を指す。和訳から「租税回避地」とも呼ばれる。
ヘイヴン(haven)は「避難所」の意。よくある間違いであるが、タックス・ヘブン(heaven:「税金天国」)ではない。ただし、フランス語では、paradis(天国、極楽)という言葉が用いられる。
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起源 [編集]
タックス・ヘイヴンは、小さな島国など産業が発達しない国が、国際物流の拠点となることを促進するために作った制度である。貿易の拠点となれば定期的に寄港する船乗りなどが外貨を消費するため、海洋国家にとっては有利な方法だと考えられてきた。したがってタックス・ヘイヴン税制が適用される業種は、本来は物流セクターであった。
タックス・ヘイヴンの現状と課題 [編集]
国際金融取引を活発化させる目的で一定の減税措置が設けられることは珍しいことではない。そのような意味では、タックス・ヘイヴンは東京やロンドンにすらあるといわれる。しかし、タックス・ヘイヴンといえば、通常は、ケイマン諸島のような、国際金融取引の単なる中継地として利用されることを想定したような、それ自体は特に見るべき産業のない島国が想定される。そして、現在の国際金融取引においては、租税負担の軽減を目的として、多くの資金がタックス・ヘイヴンを経由して動いており、もはやタックス・ヘイヴンは必要不可欠な存在であると考えられている。その一方で、タックス・ヘイヴンを利用した租税回避スキームに対して各国は、いわゆるタックス・ヘイヴン対策税制を整備してこれに対抗しようとしているものの、根絶にはほど遠い状況である。 また、一部のタックス・ヘイヴンには、本国からの取締りが困難だという点に目を付けた、暴力団やマフィアの資金や第三国からの資金が大量に流入しているといわれている(マネーロンダリング)。
タックス・ヘイヴンの種類 [編集]
タックス・ヘイヴンはいくつかに分類できる。
- タックス・パラダイス: 租税なし
- タックス・リゾート: 特定業種(銀行など)に対して減税または免税
- タックス・シェルター: 国外源泉取得を減税または免税
- ロー・タックス・ヘイヴン: 条約締結国には低い税率を適用
タックス・ヘイヴンの定義 [編集]
OECD [編集]
OECDは、下記(イ)に当てはまり、かつ下記(ロ)の(a)~(c)のいずれか一つでも該当する非加盟国・地域を「タックス・ヘイブン」と認定している。
- (イ) 金融・サービス等の活動から生じる所得に対して無税としている又は名目的にしか課税していないこと。
- (ロ)
- (a)他国と実効的な情報交換を行っていないこと。
- (b)税制や税務執行につき透明性が欠如していること。
- (c)誘致される金融・サービス等の活動について、自国・地域において実質的な活動がなされることを要求していないこと。
日本のタックス・ヘイブン対策税制 [編集]
租税特別措置法において、法人税の実効税率が25%以下となる国や地域を、事実上タックス・ヘイブンと認定している。
主なタックス・ヘイヴン [編集]
OECD「非協力的タックス・ヘイブン・リスト」(2002年4月18日)<7> [編集]
- アンドラ
- リベリア
- リヒテンシュタイン
- マーシャル諸島
- モナコ
- ナウル
- バヌアツ
OECD「タックス・ヘイブン・リスト」(2000年6月)<35> [編集]
- カリブ(17)
- アンギラ(英)
- アンティグア・バーブーダ
- アルバ(蘭)
- バハマ
- バルバドス
- ベリーズ
- パナマ
- ヴァージン諸島(英)
- ドミニカ国
- グレナダ
- モンセラット(英)
- アンティル(蘭)
- セント・クリストファー・ネイヴィース
- セント・ルシア
- セント・ビンセント及びグレナディーン諸島
- タークス諸島・カイコス諸島(英)
- ヴァージン諸島(米)
- 大洋州(7)
- クック諸島(ニュージーランド)
- マーシャル諸島
- ナウル
- ニウエ(ニュージーランド)
- サモア
- トンガ
- バヌアツ
- 欧州(7)
- アンドラ
- ジブラルタル(英)
- ガーンジー(英)
- マン島(英)
- ジャージー(英)
- リヒテンシュタイン
- モナコ
- その他(4)
- バハレーン
- モルディブ
- セイシェル
- リベリア
OECDのタックス・ヘイブン判定基準を満たすが、2000年6月以前に、2005年までの有害税制除去を約束した国・地域<6> [編集]
- バーミューダ諸島
- ケイマン諸島(英)
- サンマリノ
- マルタ
- キプロス
- モーリシャス