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密造酒
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密造酒(みつぞうしゅ)とは、政府等の公的機関の許可を得ないで製造されたアルコール飲料の総称である。本来、酒税の課税対象であるアルコール飲料を無許可で製造するため、大抵の近代国家では、税制度への依存度が高まるにつれ、これら密造酒製造には厳罰が科せられる傾向が強い。
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概要 [編集]
近代国家の成立において、税制は国家経済の基礎となるが、特に嗜好性の強い酒類は、多くの国家で課税対象にされた。しかししばしば課税額の設定が高過ぎるため、一般の家庭や地方コミュニティー等で自家消費する酒類の製造を、中央の政府に許可を得ずに行う事が横行した。
近代ヨーロッパ史において、酒造の歴史は往々にして密造酒の歴史と重なる事が多い。君主政治下においては王侯・貴族が政治を私物化することもままあったが、この中では自身の生活でより贅を尽くすため、酒税を始めとする嗜好品には重税を科すことも行われた。また戦争という国家の沽券をかけた事業には莫大な経費がかかったが、酒税は近世において大衆から資金を広く徴収するには「非常に便利の良い」口実ともなった。これらの事情により、特に酩酊しやすい蒸留酒ほど、より高額な税収が期待され、また高い酒税率が設定された。そのため、こういった課税を回避するために秘密裏に作られた密造酒の多くが蒸留酒である。
これら密造酒は往々にして製造者がいい加減に作っている事が多いため、衛生的ではなかったり、飲用に適さない成分が含まれている事もある。しかしちょっとした知識と入手しやすい道具で、家庭で簡単に製造できる部分もあるため、しばしば製造され、自家消費は絶えないとされている。家庭内で製造される物に関しては、滅多に露見する事も無いため、一向に摘発が進まないのも、この問題に根強く絡む部分である。
日本に於ける密造 [編集]
税務署からの免許がない状態でのアルコール分を1%以上含む酒類の製造は、酒税法で禁止されている。酒税法第54条には罰則規定があり、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられると同時に、製造された酒類、酒母、もろみ、原料、副産物、機械、器具又は容器が所有者の如何に関わらず没収可能な規定がある。免許を交付されるためには、一定以上の量を製造しなければならないが、清酒やビールなどは60キロリットル以上、ウイスキーや果実酒など少ないものでも6キロリットル以上を製造せねばならず、個人が家庭で製造することは事実上不可能である。ただし例外で黙認されている地域もある(青ヶ島村など)。また農業学校(高校・大学)のそれは量産しない「醸造試験所」扱いの例外である。
酒に水以外のものを混和する場合も違法であるが、家庭や飲食店で酒に消費の直前に酒を混ぜること(カクテルなど)や自家消費用に20度以上の酒に酒以外のもので以下に挙げるものを混和しない場合に、混和後アルコールが新たに1度以上発酵しない場合に認められている。(酒税法施行令(昭和三十七年三月三十一日政令第九十七号)第50条第10項第2号及び酒税法施行規則(昭和三十七年三月三十一日大蔵省令第二十六号)第13条第3項)つまり、自家製の梅酒などがこれに当たる。
- 一 米、麦、あわ、とうもろこし、こうりやん、きび、ひえ若しくはでんぷん又はこれらのこうじ
- 二 ぶどう(やまぶどうを含む。)
- 三 アミノ酸若しくはその塩類、ビタミン類、核酸分解物若しくはその塩類、有機酸若しくはその塩類、無機塩類、色素、香料又は酒類のかす
ぶどうの混和が認められていないのは、ブドウ果実自体に含まれる強力な酵素が新たなアルコール発酵を促してしまい、リキュールの度数が上昇するためであるとされている。 しかし実情は、ぶどう由来の成分により税区分がリキュールのものからワインのものに適用されることによる。税率の差分によりいわば脱税が発生するため、ぶどうの混和が認められないのである。
同様の理由により、一に示される穀類の混和が禁止されている。
なお2008年4月30日から、一定の要件の下に、免許がなくとも旅館や飲食店等も梅酒等が出せる特例措置が設けられた。適用を受けるためには税務署へ特例適用の申請を行う必要がある[1]。
密造酒の例 [編集]
- ウィスキー
- 樽詰前のウイスキーは、穀物を発酵させて作る、僅かに麦芽乾燥に用いた燃料の香りがするだけの蒸留酒(スピリッツと呼ばれる)だが、古くはこのスピリッツを直接飲用していた。しかし密造酒ともなると、大っぴらに販売する事はおろか、それと判る状態で街道を使って運搬するだけでも摘発される危険性があったため、しばしば酒税の安い酒精強化ワインであるシェリー酒の樽に入れて運搬された。また摘発を逃れるため、何年も各地に点在した洞窟に隠される事も多く、幸か不幸かシェリー樽に詰められたスピリッツは熟成され、現在のスコッチ・ウイスキーが完成された。
- 禁酒法
- これとは別にアメリカでは、1851年から段階をおって全米各地で施行された禁酒法により、酒類の製造・運搬・販売が禁止されたが、逆に酒類の密売に加え粗悪な密造酒が横行し、アル・カポネを始めとするギャング集団が大々的な密造酒の製造と密売で巨額の富を手中にするといった、芳しくない社会現象が発生した。この時、製造・密売されていたのは通称バスタブ・ジンと呼ばれる蒸留酒で、風呂桶に水を張って手製の蒸留器を沈め、これを使って蒸留された。これらの製造過程はお世辞にも衛生的とは言えず、また医薬用のメチルアルコールが混入した物まで出回るようになり、健康被害を受ける人や1,500人を超える死者が出て問題となった。禁酒法自体もその実としてざる法で、密造業者らは捕まってもすぐに釈放されていたという。
- どぶろく
- どぶろく(濁酒)は清酒発生以前の、米を使った素朴な酒類で、一般家庭でも米を炊いた飯と水と麹があれば、誰にでも簡単に作る事が出来る。日本では明治時代に政府が、税収の3割にのぼる酒税の徴収を行うため、酒税法によって清酒の生産を厳しく管理した。しかし農村部(特に秋田県北部などの東北地方)では日常的にこれらどぶろくが作られ、家庭内で消費されていたという。この摘発が難しい家庭内のどぶろく作りは昭和中庸まで続き、現代に至っては「どうせ取り締まれないんだし、酒税徴収も税収のほんの一部に過ぎず、しかも洗練された清酒に比べたらだいぶ味わいの劣る家庭生産のどぶろくが今更酒造業界に打撃を与えるとも考えられず、これらに関しては解禁すべきではないか?」とする議論も興っている。これには欧州などの自家生産ビールやワインが、広く農村部などで自由に愛飲されている事もあり、同種の商業主義に寄らない家庭で消費される酒類の扱いが議論の的となっている。
脚注 [編集]
関連項目 [編集]
梅酒
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梅酒(うめしゅ)とは、一般的に6月頃に収穫される青梅をアルコール(ホワイトリカー、焼酎が一般的)で漬け込んだ酒で、日本を代表するリキュールである。「うめざけ」「ばいしゅ」「うめじょうちゅう」とも言われる。
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概要 [編集]
夏の喉の渇きを止め、暑気払いや疲労回復に良く、また体を温める。梅とアルコールの殺菌効果で、生水に少量落とすと毒消しにもなる。家庭でも簡単に作れることから、古来民間の健康酒として親しまれ、近年では食前酒としても飲まれている。
製造法 [編集]
酒に砂糖を加えたものに、梅の実を漬けて冷所保存する事で作られる。
一般的な割合は、梅の実1kgに対して砂糖0.4~1kg、酒1.8lである。梅の実の茎を竹串などで取り除き、傷のある実があれば除く。よく洗ったのち念入りに拭いて水分を取り、1時間ほど天日で干す(時々ひっくり返し完全に乾燥させる)。梅と砂糖を交互にビンに詰める。この際、梅が浮いてこないよう砂糖を一番上にする事が多い。これにゆっくりと酒を注いで密栓し、冷暗所で保存する。
梅酒に使われる梅には、最高級梅とされる南高梅の他、古城、白加賀、鶯宿、豊後、竜峽小梅、林州、玉英、梅郷など、果肉が厚く種の小さい酸味高い品種が用いられる。黄色く色づき熟した物ではなく、青梅が良いとされるが、熟した梅を使用しても独特の香りが得られる。
砂糖は一般的に氷砂糖が使用されるが、蜂蜜、黒糖、果糖なども使用される。溶解が比較的おだやかな糖類の方が好ましい。その理由については、糖が溶け出す前に浸透圧差によって酒を吸った梅から、糖が溶けた後に浸透圧が高まった酒にその成分を放出するためと説明されている。梅が酒を吸う前に急速に糖が溶解すると、浸透圧が釣り合ってしまって梅に含まれる成分は放出されない。実際、酒だけ入れておいて置くと、梅の香りがするだけの酒が出来上がってしまう。
酒はホワイトリカー(甲類焼酎)、ブランデーを用いるのが一般である。ジン、ウォッカ、ラム酒、本格焼酎、泡盛などの蒸留酒や、日本酒、ワインなどの醸造酒、みりんなどが用いられる場合もある。ただし旨味を出すには長期の熟成が必要となるため、低アルコール度数の酒を使う場合は腐敗やカビの発生に注意を払わなければいけない。一般的に35度以上の酒が望ましいとされている。また、自宅で漬け込む場合には、アルコール度数が20度以下の酒を使うと違法である。なお、日本で市販されている梅酒の多くは、アルコール度数10~15度である。
漬け込み期間が1年程度のものが多い[要出典]。 期間を長くし、置いておくほど"こく"が出るとされ、10年以上熟成させたものも市販されている。長期間熟成させる場合、梅の実を途中で取り出し、また、その取り出した梅を食用とする事もある。
日本の法律の例外規定 [編集]
1962年に改正された酒税法では、自分で飲むためであれば、アルコール度数が20度以上の酒類に、下記の物品以外のものを混和する事を「製造行為」と見なさないとする規定を、例外的に設けている。
- 米・麦・あわ・とうもろこし・こうりゃん・きび・ひえ・でんぷんまたはこれらのこうじ
- ぶどう(やまぶどうも含む)
- アミノ酸もしくはその塩類、ビタミン類、核酸分解物もしくはその塩類、有機酸もしくはその塩類、無機塩類、色素、香料又は酒類のかす(酒税法第7条、第43条第11項、同法施行令第50条、同法施行規則第13条第3項)
アルコール度数が20度以下の場合、上記の物品を混和した場合は、漬け込む過程で醗酵が生じ、アルコールが生成される可能性がある。つまり上記は、漬け込む過程で絶対にアルコールが生成しないという条件に基づいて設けられた規定である。従って10~14度の一般的なみりんなどで漬け込む場合は、腐敗の可能性だけでなく法律違反となる(酒税法施行令第50条第10項の1)。
2007年6月14日、テレビ番組『きょうの料理』(日本放送協会)の「特集★わが家に伝わる漬け物・保存食~梅酒~」にて梅酒のつくり方[1]を放送したが、そのレシピに従い個人が梅酒をつくると違法となることがわかり、後日、謝罪放送がされる[2]という事態が発生した。
なお1962年の改正以前は、家庭で梅酒を作る事は酒税法違反行為であった。ただし現実には一般家庭において梅酒を作る事は普通に行われており[3]、酒税法の改正は現実にそぐわない法律の改正という意味合いがあった。
その後、2008年4月30日に酒造法における租税特別措置法が制定・施行され、酒場、料理店等については、申請をすることによって一定の要件の下に酒類の製造免許を受けることなく、その営業場において自家製梅酒等を提供することができるようになった。
申請については国税庁ホームページで指定様式の申告書『特例適用混和の開始・休止・終了申告書』をダウンロード〈申請・届出様式→酒税関係→38.特例適用混和の開始・休止・終了申告書〉し、所轄の税務署に郵送または持参する。 みなし製造適用除外・条件は次の通り ①酒場、料飲店が自分の店で販売(飲酒)することを目的に蒸留酒類と酒以外の物品(梅など)を混和する場合および焼酎と水を事前に割っておいたものを提供するいわゆる前割りには酒税法に定められているみなし製造の規定を適用しない ※他者への譲渡や店外飲酒を目的に販売することはできない ②酒場、料飲店が自分の店で販売できる量は1年度(4月1日~翌年3月31日)当り1kℓ(1000ℓ)以内に止めなければならない ③みなし製造を行う場合、事前に税務署へ届け出なければならない
梅酒を使ったカクテル [編集]
- 梅酒ロック
- 梅酒ソーダ
- 梅酒アイスティー
- 梅酒&マンゴー
- 梅酒ジンジャー
- 梅酒&グレープフルーツ
- 梅酒&オレンジ
- あまずっぱ(+ドライジン+グレープフルーツジュース+グレナデン・シロップ)
- 吉祥天女(+スミノフの40度ウォッカ+モナン・ピーチ・シロップ+ピーチネクター)
- 黄金池(+チェリーブランデー+ブルーキュラソー+ジンジャーエール)
- 梅酒モーニ(+グレープフルーツジュース+トニックウォーター)
- 梅酒フィズ(+レモンジュース+グレナデン・シロップ+ソーダ)
脚注 [編集]
- ^ 『くらしのパートナー:きょうの料理』日本放送協会。
- ^ 「お詫びと訂正」『くらしのパートナー:きょうの料理』日本放送協会。
- ^ チョーヤ梅酒が梅酒の製造販売を開始したのは1959年であるが、社内からも「梅酒は家庭で普通に作っているから、売れないのではないか?」という反対意見が多かったという。
どぶろく
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どぶろく(濁酒)とは炊いた米に米麹や酒粕等に残る酵母などを加えて作る酒である。濁り酒(にごりざけ)とも言われることがある[1]。
非常に簡単な道具を用いて家庭で作る事も可能だが、日本では酒税法において濁酒(だくしゅ)と呼び、許可無く作ると酒税法違反に問われる事になる。
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概要 [編集]
この酒は米を使った酒類では最も素朴な形態の物と言われ、一般の酒店でも購入可能な濁り酒に近い。これを沈殿濾過する事で清酒を作る事も可能だが、清酒になる程には漉さずに飲用する。清酒に比べ濾過が不十分であるため、未発酵の米に含まれる澱粉や、澱粉が分解した糖により、ほんのり甘い風味であるが、アルコール度は清酒と同程度の14~17度にもなるため、口当たりのよさがあだとなってつい飲み過ごして悪酔いしやすい。
どぶろくの語源は定かではない。平安時代以前から米で作る醪の混じった状態の濁酒のことを濁醪(だくらう)と呼んでいたのが訛って、今日のどぶろくになったと言われる[2]。
どぶろくの起源についても諸説あり、中国の揚子江/黄河流域の稲作文化の直接伝播(紀元前3500年ごろ)に伴って伝わったという説や自然発酵による独自の発生説など諸説ある。どちらにせよ、3世紀後半の魏志倭人伝には倭人は酒を嗜むといった記述があり、どぶろくの歴史は長い。
なお、マッコリを日本のどぶろくや日本酒のルーツとする記載がネット上で散見されるが、そもそも使用する麹が異なっている(マッコリは麦麹、どぶろくは米麹)ので、両者は醸造学的に異なる歴史を歩み発展した別系統の酒であるとする見解がほとんどである。最近の説では、稲作の伝播が朝鮮半島では北方を伝わって紀元前2000~2500年頃であるのに対して日本への伝播時期が南方を通じて紀元前3500年頃であるというものもあり、だとすれば一層両者は別個の物と言える。
家庭でも簡単に作る事ができるが、違法行為(酒税法違反)であるため、転じて密造酒の別名としてこの言葉が用いられる事もある。この事から隠語で呼ばれる事も多くどぶや白馬(しろうま)、溷六(どぶろくまたはずぶろく)といった呼び方も地方によっては残されている。なお溷六と書くと、泥酔状態にある酔漢の事を指す別の言葉にもなる。
日本におけるどぶろく作りの歴史は米作とほぼ同起源であると云われるが、明治時代においては政府の主要な税収源であった酒造税(1940年以後、酒税)の収入を減らす要因であるとして、農家などで自家生産・自家消費されていたどぶろく作りが酒税法により禁止され、現在に至っている。しかし家庭内で作る事のできる密造酒でもあるため摘発は非常に難しく、米どころと呼ばれる地域や、酒を取り扱う商店等の少ない農村などで、相当量が日常的に作られ消費されていたとする話もある。むしろ、実際の禁止理由は日清・日露戦争で酒税の大増税を繰り返した際にその負担に耐え切れないとする醸造業者に増税を許容してもらうための一種の保護策であったと考えられている。
一部では自家生産・自家消費に限ってどぶろく作りを解禁しようという動きもあるものの、解禁には程遠いのが現状である。なお、酒税法上の罰則規定に拠れば、製造するだけでも5年以下の懲役または50万円以下の罰金となっている。
だが、日本では古来より、収穫された米を神に捧げる際に、このどぶろくを作って供える事で、来期の豊穣を祈願する伝統を残す地域があり、この風習は現代でも日本各地のどぶろく祭等により伝えられている。このため宗教的行事におけるどぶろくの製造と飲用は、許可を受ければ前出の酒税法罰則適用外(酒税は課税される)となる。この場合、神社の境内等の一定の敷地内で飲用するものとする。
また酒造の制限は税制上の理由であり、所得税などは申告税制になっていることから家庭内酒造についても申告納税さえすれば自由に認めるべきであり、脱税酒についてのみ取締りをするべきであるという根強い意見もある。
製造方法 [編集]
※家庭で製造・自家消費する場合でも、酒税法により処罰される可能性があります
- 良く研いだ白米を水に浸し、少量の飯を布袋に包み同じ容器に浸す
- 一日一回浸けた袋を揉む
- 三日程度置き、甘酸っぱい香りがしてきたら、水(菩提酛)と米を分け、米を蒸す
- 蒸した米を30度程度に冷やしてから米麹を混ぜ、取り置いた菩提酛と水を加える(初添え)
- 一日一回かき混ぜ、二日程度置く
- 白米を蒸し、30度程度に冷やしてから麹と水を混ぜ、加える(中添え)
- 翌日も同様に仕込む(留添え)
- 一日一回かき混ぜ、一、二週間発酵させた後、布巾などで漉して出来上がり
菩提酛には乳酸菌と酵母が含まれ、乳酸菌の生成する乳酸が雑菌の発生を抑え、麹の分解酵素により生成された糖を酵母が分解しアルコールが生成される(並行発酵)。また、米・麹の投入を複数回に分けることにより、糖度及びアルコール度数の高さによる酵母への影響を抑えて、度数の高い酒の製造を可能にしている(複発酵)。一部では、発酵を安定促進させるためにイーストを加えたり、少量のヨーグルトを加える事もある。なお発酵途中には炭酸ガスが発生するため、密閉容器で作る場合は時折ガス抜きするにしても耐圧性のある容器が望ましい。密閉できない容器の場合は雑菌が入ると腐敗するため注意を要する。使用する水は一度沸騰させた湯冷ましか井戸水(ミネラルウォーターも可)を使用する。
加熱殺菌処理されていない生酒であるため、保存は難しいとされ、もろみを濾した後は冷蔵し、早めに消費しないと、雑菌が繁殖するなど、すぐ飲用に適さない状態になると言われている。
なお、濾した物を暫く沈殿させ、上澄み、中澄みと分けてくみ取る場合があり、上澄みで透明感があるほど良いともいわれている。
どぶろくと祭(どぶろく特区) [編集]
豊穣祈願などの宗教行事や地域産品としてのどぶろくを製造する地域は日本各地に存在する。
このようなどぶろく作りでは、地域振興の関係から、2002年の行政構造改革によって、構造改革特別区域が設けられ、同特別区内でのどぶろく製造と、飲食店や民宿等で、その場で消費される場合に限り、販売も許可されている(通称「どぶろく特区」と呼ばれる)。
しかし同特別区外へ持ち出す事になる「みやげ物としての販売」に関しては、酒税法が適用されるため、酒類製造と販売の許可が必要となる。また、実際には酒税法にて最低醸造量として定められている年間6キロリットル(一升瓶にして約3,326本)という制限を撤廃したのみで、アルコール度数の検査等々、酒税法に記される検査はあまり変わっていない。
なお、どぶろく特区となっている地域は、以下列記しているように主に祭などのいわゆる行事に使う目的で製造している地域と、山形県飯豊町のように特定の箇所で常飲させる地域に分けることができると考えられるが、どちらも最大の目的は地域振興である。
また、このどぶろく特区には課題があると考える人もおり、
- 特区認定に関して、地域限定等が無く、その方面でのハードルが低い。そのため多くのどぶろく特区ができ、あまり差別化が図れない
- 前述したように検査が煩雑で、小規模製造とするにはハードルが高い。
- 許可の公布については酒税法に準じているため縛りが多い。
などと、特区として未成熟であるという意見もある。
どぶろく特区である区域の例 [編集]
日本のどぶろく祭 [編集]
(省略)どぶろく裁判 [編集]
どぶろくの製造と自家消費に関しては、『どぶろくをつくろう』(農文協)の著者である前田俊彦が興した、通称どぶろく裁判が知られている。裁判では、食文化の一つである(と主張する)どぶろくを、憲法で保障された人権における幸福追求の権利において、自家生産・自家消費する事の是非に始まって、「酒税法上で設けられた様々な制限が、事実上において大量生産が可能な設備を保有できる大資本による酒類製造のみを優遇し、小規模の酒類製造業が育たないようにしている」という前田側の主張がクローズアップされている。
同裁判は最高裁判所にまで持ち込まれ、1989年12月14日に「製造理由の如何を問わず、自家生産の禁止は、税収確保の見地より行政の裁量内にある」として、酒税法の合憲判断と前田の有罪判決が出た。
関連項目 [編集]
脚注 [編集]
酒税法
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酒税法 | |
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通称・略称 | なし |
法令番号 | 昭和28年2月28日法律第6号 |
効力 | 現行法 |
種類 | 租税法 |
主な内容 | 酒税の賦課徴収 |
関連法令 | 消費税法、たばこ税法、アルコール事業法 |
条文リンク | 総務省法令データ提供システム |
酒税法(しゅぜいほう;昭和28年2月28日法律第6号)は酒税の賦課徴収・酒類の製造及び販売業免許等を定めた法律。1940年に制定された旧酒税法(昭和15年法律第35号)を全面改正する形で制定された。度数90度以上で産業用に使用するアルコールについてはアルコール事業法で扱われる。
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構成 [編集]
- 第1章 - 総則(第1条~第6条の4)
- 第2章 - 酒類の製造免許及び酒類の販売業免許等(第7条~第21条)
- 第3章 - 課税標準及び税率(第22条)
- 第4章 - 免税及び税額控除等(第23条~第30条)
- 第5章 - 申告及び納付等(第30条の2~第30条の6)
- 第6章 - 納税の担保(第31条~第36条)
- 第7章 - 削除(第37条~第39条)
- 第8章 - 雑則(第40条~第53条の2)
- 第9章 - 罰則(第54条~第62条)
税率政策 [編集]
かつては日本古来の焼酎を大衆酒と位置付けて低税率とする一方、ウイスキー、ブランデー等の洋酒は高級酒とされて高税率であった。これについて洋酒生産国から非関税障壁であるとの批判を受け、現在では焼酎とウイスキー、ブランデー、スピリッツはアルコール度数において等しい税率を賦課されている。
また、かつては日本酒は品質により特級・一級・二級の区分がなされ、高等級の酒ほど高税率を賦課されていた。等級審査は生産者の申請によるものであり、審査を経なければ二級酒として扱われた。そのため、特級や一級に相当する品質の酒について敢えて審査を申請せず、二級酒として販売する業者が増加した。そのため現在では公的な等級制度は廃止され、一律の税率が賦課されるようになっている。
現在ではビールに対する高税率を回避するために開発された、発泡酒や"第三のビール"の税率が引き上げられる傾向にある。
規制緩和 [編集]
かつては家庭においてリキュールを作る事さえ不可能な厳格な法律であった。1962年に改正され、家庭で梅酒などリキュールを作る事が可能となった。ただし漬け込むアルコールの度数は20度以上とするなど条件は厳しく例外規定的なものであり2007年6月14日、テレビ番組『きょうの料理』(日本放送協会)の「特集★わが家に伝わる漬け物・保存食~梅酒~」にて梅酒のつくり方を放送したが、そのレシピに従い個人が梅酒をつくると違法となることがわかり、後日、謝罪放送がされるという事態が発生した。
既存の小売業者を保護し酒税の安定した賦課徴収を図るために、新規参入者に対しては酒税法に基づく厳格な制限が課されていた。しかし、1998年3月に閣議決定された規制緩和推進3カ年計画に基づき、2001年1月に距離基準(既存の販売場から一定距離を保つ)が廃止され、2003年9月には人口基準(一定人口ごとに販売免許を付与)が廃止された。これにより酒類の販売が事実上「自由化」されたといわれているが、販売に当たり免許が必要であることに変わりない。
なお、酒類販売の「自由化」と同時に既存業者を保護することを目的とした議員立法(酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法)が制定され、かえって規制が強化された地域(特別調整区域)が存在するようになった。同法は2年間の時限立法であったため2005年8月に失効しているが、失効前の改正によって規制強化は2006年8月末日まで存続した。
酒税法上の分類 [編集]
法律改正により2006年5月より分類が変更され、一部の定義なども変更されている。
- 発泡性酒類
- 醸造酒類
- 蒸留酒類
- 混成酒類
改正前の定義 [編集]
なお参考として改正前の分類と定義を記す。
- 清酒
- 米、水及び清酒かす、米こうじその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの
- 合成清酒
- アルコール、しょうちゅう、清酒、ぶどう糖等を原料として製造した酒類で、その香味、色沢等が清酒に類似するもの
- しょうちゅう
- しょうちゅう甲類(ホワイトリカー(1))
- アルコール含有物を連続式蒸留機で蒸留したもので、アルコール分36度未満のもの
- しょうちゅう乙類(ホワイトリカー(2))
- アルコール含有物を蒸留した酒類で、アルコール分45度以下のもの(しょうちゅう甲類以外のしょうちゅう) 現在はしょうちゅう乙類はしょうちゅう甲類より優るという意味で本格しょうちゅうという言い方に変わった。
- ウイスキー類
- スピリッツ類
- リキュール類
- 酒類と糖類等を原料としたものでエキス分が2度以上のもの
- 雑酒
関連項目 [編集]
外部リンク [編集]
税務署
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日本において、税務署(ぜいむしょ)は、国税庁の下部組織として、所管事務の一部を分掌させるために設置されている国の行政機関。財務省設置法第二十四条の規定に基づき設置される。
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概要 [編集]
2005年3月現在、税務署の所管事務は財務省組織規則によって以下のように定められている。
- 内国税の賦課及び徴収に関すること
- 税理士制度運営に関すること
- 酒税の保全並びに酒類業の発達、改善及び調整に関すること(酒税の保全並びに酒類業の発達、改善及び調整に関する制度の企画及び立案を除く)
- 酒類に係る資源の有効な利用の確保に関すること
- 印紙の模造の取締りを行うこと
- 税務署の所掌事務に係る国際協力に関すること
- その他、法令に基づき、税務署に属させられた事務
税金のうち、国税(中央税)である(所得税、法人税、消費税、相続税、贈与税、登録免許税、印紙税、酒税、揮発油税(ガソリン税)、地方道路税、航空機燃料税、電源開発促進税、自動車重量税、石油ガス税、石油石炭税、たばこ税など)に関する業務を行なっており、確定申告の時期には多くの人が訪れ、確定申告に関する相談などを受け付けている。
組織 [編集]
幹部 [編集]
- 署長
- 副署長(小規模署では設置されない)
- 特別国税調査官・徴収官等の一部(国税庁長官から辞令が与えられる、署長・副署長クラスの幹部職員。後述する課長クラスの特官と区別するため「指定特官」とも呼ばれる。一部の署のみ)
内部部局 [編集]
- 総務課
- 総務係
- 会計係(一部の署を除く)
- 厚生係(ごく一部の署のみ)
- 管理・徴収部門(規模が極めて小さい署においては、総務課の中の一担当として設置されている署もある)
- 個人課税部門
- 資産課税部門(中小規模署においては、個人課税部門の中の一担当として設置されている)
- 法人課税部門
- 特別国税調査官・徴収官等(国税局局長から辞令が与えられる、課長・統括国税調査官等クラスの職員。一部の署を除く)
- ※各系統の部門の数は署の規模によってまちまちであり、少ないところでは1部門のみ、多いところでは20部門を超える署も存在する。各部門には支所・出張所の課長職に当たる統括国税調査官等が1部門につき1名配置され、その下に数名から十数名程度の部下に当たる職員が配属される。
- ※一般的な部門内の構成
- 統括国税徴収・調査官(課長)-上席国税徴収・調査官(課長補佐・係長)-国税徴収・調査官(係長・主任)-事務官(同。民間企業における一般職員に相当)。
- 括弧書きは総務課の場合。ただし課長補佐・係長で管理職となるのは総務課の職員のみで、他の部門の同じ格付けの職員は管理職に該当しない。また、部門内の役職別人数は年齢構成等により異なる。
- 国税局の下部組織という位置づけのため、国税局や役所と同じ職名でも地位は1ランク下位である。例えば課長や第一統括官は役所等の課長補佐と、上席徴収・調査官は主査と同等の格付けに相当する。
また、署によっては、これらの他に酒税や総合的な調査などの専門分野を指導する担当や、部門間の連絡調整など現場レベルの事務運営を指揮監督する連絡調整官などといった専門職が配置される税務署もある。これらの職は通常課長待遇(専門官、連絡調整官など)または課長補佐待遇(記帳指導推進官など)での配属となるが、酒類指導官などで署長・副署長クラスの幹部が配置される枠もごく僅かではあるが用意されている。